くらのすけの映画日記

「シネマラムール」の管理人くらのすけの映画鑑賞日記です。 なるべく、見た直後の印象を書き込んでいるのでネタバレがある場合があります。その点ご了解ください。

映画感想「エリアナ、エリアナ」「下女」「トロピカル・マラディ」

エリアナ、エリアナ

シネヌーヴォーで開催中のアジア映画の傑作選より三本みてきました。
「アリアナ、アリアナ」
この作品はインドネシアの映画です。
冒頭、横長の画面ながらスタンダードな画面の中に独特のテンポのリズムある曲とともにジャカルタの町の様子が映し出されます。そして画面はエリアナという制服の胸につけられたネームプレートのアップ、そして、とある更衣室で主人公エリアナが友達と会話しているシーンへと続きます。
淡々とした物語ですが、それなりに丁寧に作られた作品で、傑作のレベルはともかく、インドネシアの作品でもこのレベルの映画があるものだと納得できる映画でした。

物語は田舎を出て都会ジャカルタで一人暮らす娘のところへ母が訪ねてくるところから始まります。一方娘のエリアナは一緒に住んでいた友達が行方不明で、彼女に連絡を取るべく気をもんでいます。そんな二人がタクシーを借り切って夜のジャカルタを走りながら、田舎に連れ戻そうとする母と友達に連絡をつけようと電話を続ける娘のやりとりがメインストーリーです。

結局、友達がエリアナの母に連絡をしてきてもらったことがわかり、またエリアナも友達に会って、ことの次第を知り、お互い分かり合って、母に反抗していた娘も母の気持ちに答え空港へ行くのですが、母は航空券を渡して、向こう6ヶ月有効だから、もう少しここで自分を見つけてから帰ってきなさいと柔軟な気持ちを伝えます。どこか「千年の祈り」をみた後の感動のようなものを覚え、このラストはよかった。


次は韓国映画の傑作ホラー「下女」
とにかく、B級ホラーの傑作と呼ぶべき逸品で、ヒッチコックあり、ロジャー・コーマンありのとこれでもかというほどのホラーの常道が徹底されて登場します。足の悪い女の子、ひたすら身を粉にして尽くす妻、一見いい人でありながらどこか独りよがりで不気味な夫、そして見るからにサイコっぽい下女と、登場人物がそろいます。さらに、ヒッチコック映画によくでてくる階段、見るからに不気味な猫いらずの薬などなどが当たり前のようにセッティングされ、これでもかこれでもかと怖がらせようとしてくるのです。

でも、その必死の怖がらせも、いつのまにかにんまりとばからしくなるほどおもしろくなってくるというこれぞB級ホラー映画と呼ぶにふさわしいストーリー展開なのです。

まずカメラはとある一軒の家の窓の外から部屋をのぞきます。部屋の中には仲の良さそうな夫婦が食事をしながら夫は新聞の記事を読んでいる。そこにはなにやら最近下女と主人の不倫の結果起こった悲劇のことがかかれているらしい。カメラが引くと二人の子供があやとりをしている。そのシーンをバックにタイトル「下女」とみるからにホラーっぽいロゴがでます。

主人は工場で女工さんたちにピアノを弾いて音楽を指導している。ハンサム(と映画の中で入ってます)なので女工さんたちのあこがれで、ふとラブレターを渡したために一人の女工さんが首になる。一方家を新築したため下女を捜しているこの主人はたまたま、女工さんの知り合いを紹介され雇うようになる。
女工さんたちにもてる一方で粗雑にあつかったために逆恨みされ、一方下女に迫られて関係を持ってしまったためにさらに立場が苦しくなる一方で、異常な下女に執拗に恐怖を味わわされる。二転三転の恐怖シーンの連続に、誰が悪者かわからなくなるほどになんでもありのその場限りの展開。しかしそれが何ともおもしろい。

クライマックスの後、再び冒頭の部屋のシーンに戻って、実はさっきまでの話が空想であったとわかり、主人は画面の方へ歩いてきて観客に話しかける落ちまでついている。ある意味傑作といえるB級映画でした。DVDがほしいくらいです

さて最後は「トロピカル・マラディ」というタイの映画。
正直、しんどいやら眠いやら、何のことかわからんし、まさに解説通り賛否両論の映画でした。

一人の兵士とその友人の物語であるかのようにストーリーが始まります。しかし第二部というタイトルがでて、物語は一人の兵士が森で見かけた裸の男、(これが虎の妖精らしいのですが)を追う物語へ続きます。ほとんどせりふもなく字幕の解説が所々に入る。しかも画面が暗い。内容がシュールで、気が遠くなるほど退屈な展開が延々と続くのです。

ただ、ラスト近く、夜の森で死んでいた動物が陰の光のように立ち上がって歩く場面やら大きな大木の茂みがきらきら輝く場面やらは幻想的で美しかった。とはいえ結局、ストリーの理解もなく終わってしまうというなんともわかりかねる作品でした。