くらのすけの映画日記

「シネマラムール」の管理人くらのすけの映画鑑賞日記です。 なるべく、見た直後の印象を書き込んでいるのでネタバレがある場合があります。その点ご了解ください。

映画感想「ニュー・シネマ・パラダイス」

ニューシネマパラダイス

初めてこの映画を見たのは何年前だろうか?いい映画だった記憶があるが、正直、眠かった記憶もある。イタリア映画ならではの怒るようなセリフとジョゼッペ・トルナトーレ監督ならではの淡々としたストーリーテリングが心地よい陶酔感をもたらしたのかもしれない。

今回午前10時の映画祭で見たのは数々の賞に輝いた当初のオリジナル公開版の約2時間のバージョンである。DVDで完全版の3時間バージョンがあり、こちらは主演のトトの人生を60カットほど挿入した長尺版であるが、この作品で3時間はしんどいのではないかというのが正直なところです。

いまさら物語というわけでもありませんが、植木鉢のアップからショットが始まりグーとカメラが引いて一人の老婦人が電話をしています。電話の相手は故郷を離れて暮らす主人公トト、映画監督として大成しすでに中年のおじさんになっています。
電話の内容は「アルフレードが亡くなった」というもの。その言葉にベッドの上でトトはかつての故郷での思い出を回想するところから物語が始まります。

まだ小学生のトトは映画が大好きで、その町に一軒しかない映画館に通いづめ。そこの映写技師がアルフレードというおじさん。この二人の物語を描きながら、映画が全盛期、娯楽の王様として町の人たちから愛され親しまれていた時代を淡々と描いていきます。

そこには、現代のようにこぎれいなシネコンでみるおしゃれな姿はなく、映画を見ながら当然のように会話やお酒、はてはオナニーまでしている始末。それでも誰もがスクリーンに笑い、涙し、一緒になって映画という夢の世界にのめりこんでいる。その様子が、古き良き時代とはいえ、本当に心があったかくなる思いがします。

数々の名作が画面に登場し、誰もが主人公になり、脇役になり自分の人生の中に映画の世界を映し出していく様はすばらしい。
この映画の名シーンは街角の壁に映画を投影するというアドリブを演じるアルフレードの小粋さでしょうか。

可燃フィルムのために劇場が焼け、その後、サッカーくじに当たって大金持ちになった男によって「ニューシネマパラダイス」が生まれて、物語は後半へ入ります。
火事の際に目の見えなくなったアルフレードと思春期を迎えて恋を覚えるトトの姿が後半の見所でしょうか。

特に奇抜なカメラワークも演出も施さないために、独特のむせるようなイタリアの町のムードの中でちょっと眠気をもよおしてくるのはこのあたりなんです。

ラスト、大人になったトトがアルフレードの葬式の後、自分の家に戻り自分の劇場で遺品として残してくれたフィルムをかけます。そこにはかつて少年時代、町の映画館ではカットされて上映されなかったキスシーンが次々と現れてきます。

名作、たしかに数々の賞に輝くだけの値打ちがあるかもしれませんが、個人的な感想でいうとやはりヨーロッパのしかもイタリアの映画だなという印象です。