くらのすけの映画日記

「シネマラムール」の管理人くらのすけの映画鑑賞日記です。 なるべく、見た直後の印象を書き込んでいるのでネタバレがある場合があります。その点ご了解ください。

映画感想「17歳の肖像」

17歳の肖像

1961年のイギリスを背景に、高校に通う一人の女子高生を通じて、彼女の揺れ動く心の成長振り、大人への憧れ、未知の現実の残酷さなどを繊細かつモダンな映像で描いた秀作でした。

高校生のノートにつづられていく筆跡のようなアニメーションをバックにし、軽妙なテンポの音楽が流れる中、おしゃれなタイトルバックで映画は幕を開けます。
この導入部から、作品は一人の少女から大人に変わる女性の切ない青春物語かと思わせるところが本当ににくいです。

主人公の少女ジェニーは平凡な女子高生。フランスに憧れ、両親の望むように名門オックスフォード大学を目指している成績優秀な少女である。父親も母親も当時のイギリスの中流家庭そのままの娘思いのやや過保護すぎる親である。

進学の内申書のために参加している楽隊でチェロを弾いている彼女は、ある雨の日一人の中年の紳士的な男性ディビッドにめぐり合う。

彼と知り合うことで今まで大人の世界は自分の両親の姿のみであったものを一歩外の大人の世界を知ることになります。
ダンスホールに行き、オークションに参加し、高級車に乗って大人の遊びに酔いしれるうちに次第にディビッドに惹かれていく。

のめりこむにつれて、両親の言葉も、学校の先生の忠告さえもが、すべて古い世代の考え方にしか見えなくなっていくジェニー。しかも、両親さえもがこの男性の誠実さに惹かれてしまいます。しかし、次第におぼれて良く彼女であったが、ふとしたことで非情な現実に直面してしまう。

ここまでの物語だとちょっとありきたりな青春ストーリーのごとくであるが、ここからもう一歩彼女を前進させるために手を差し伸べる人物がかつてジェニーが古すぎると攻め立てた校長や小論文の担任であることがこの映画のすばらしさである。

画面の作り方もイギリス映画らしく丁寧で美しいし、さりげなく登場する1960年代のイギリスの景色や社会がなんともノスタルジックでモダンでさえあります。

主演のキャリーマリガンも少女から大人に変貌する微妙な魅力を見事に演じきっているし、ディビッドに扮したピーター・サースガードも妻子ある大人の男であるものの完全な悪人ではないという微妙な役どころをきっちりと画面に演じている。

未知の世界への憧れから舞い上がっていた自分を見つめなおし、オックスフォード合格をラストシーンにこの少女の成長を見守ったエンディングは本当に好感度抜群でした。秀作と呼べる一本だったと思います