くらのすけの映画日記

「シネマラムール」の管理人くらのすけの映画鑑賞日記です。 なるべく、見た直後の印象を書き込んでいるのでネタバレがある場合があります。その点ご了解ください。

映画感想「パーマネント野ばら」

パーマネント野ばら

軽妙でコミカルな展開の中にどことなく垣間見られる暖かい人間ドラマ、そして、その中にさらに挟みこまれる切ないラブストーリー、そんな表現がぴったりの吉田大八監督の一本を見てきました。原作は「いけちゃんとぼく」「女の子ものがたり」の西原理恵子さんです。

物語は高知のとある漁村、そこにある一軒の美容院「パーマネント野ばら」。最近夫と別れて戻ってきた主人公なおこ(菅野美穂)とその娘ももちゃんはその美容院を経営する母と暮らし始めている。そこへ集う近所のおばさんたちはことあるごとにチンポの話ばっかり。

なおこの幼馴染みっちゃん(小池栄子)とともちゃん(池脇千鶴)とのすったもんだの毎日がにぎやかに展開していく。ときに小学生のころの三人の姿をフラッシュバックさせながら、三人三様の男運のなさをコミカルに描いていくストーリー展開がなんとも楽しい。

非現実的な笑いの中に繰り広げられる暖かい人間同士の視線のやり取りがなんとも人間味あふれる雰囲気をかもし出してきてほほえましい雰囲気が画面いっぱいに漂います。

なおこは学校の先生カシマ(江口洋介)と少女のような恋愛を続けているが、時として切ないすれ違いや、ほんの些細な溝が見え隠れする。その真相はラストシーンで明らかにされるのであるが、この垣間見せるピュアななおこの姿とももちゃんや幼馴染、母、近所のおばさんたち、母の再婚相手(宇崎竜童)とのやり取りが本当にテンポがいい。

実はカシマはすでにこの世の人ではなく、そんな妄想の中で恋愛を続けるなおこを回りの人たちが暖かく見守っていたことがラストで明らかになるのであるが、美容院に集うおばさんたちをはじめ幼馴染の友人たちのなおこによせるやさしさがラストシーンで一気にスクリーンに表現され、思わず胸が熱くなりました。

ももちゃんが浜辺にたたずむお母さん(なおこ)のもとへ駆け寄っていくところで映画は終わりますが、なんともいえない切なさが胸に残るエンディングでした。