くらのすけの映画日記

「シネマラムール」の管理人くらのすけの映画鑑賞日記です。 なるべく、見た直後の印象を書き込んでいるのでネタバレがある場合があります。その点ご了解ください。

映画感想「孤高のメス」

孤高のメス

まるでゲーム感覚ではらはらどきどきを売り物にしている昨今の医療ドラマの中で久しぶりにまじめに描いた人間ドラマとして完成させたこの作品はそれなりに評価してもいいと思いました。
もちろん映画としては凡作でこれといって取り上げるほど秀逸な部分は見あたりません。物語だけを追うならテレビでもよかったかもしれない。でもやはりそこはスクリーンでみると別の感覚にとらわれるから不思議ですね。

物語は夏川結衣扮する看護士中村浪子が亡くなり、その日記を新米医師である息子が読むというナレーション的な展開で進んでいきます。
ところが、この夏川結衣のナレーションが今ひとつ鼻につくというか、違和感があって良くない。いっそ、こうした改装形式をとらずふつうにドラマとして描いたほうがすんなりいったかもしれません。

それに公立病院改革を積極的に進める柄本明扮する市長があまりにも漫画チックでリアリティがなさすぎる。シリアスでいくのか、感動ものでいくのかが今ひとつどっちつかずで、前半はどうしてものめり込めなかった。手術シーンも内臓を色鮮やかにカメラにとらえるのはいいが、ちょっとまともすぎて、人によってはかえってグロテスクかもしれませんね。

ところがこの映画の良さは後半から終盤、生体肝移植という難手術の物語に進んでいってからで、ここからまともな人間ドラマに突き進んでくる。パッシングするマスコミたちや保身に走るほかの医師、事務長などのショット、さらには警察の登場をほんのわずかにとどめたのが成功だったかもしれない。

エンディングからエピローグ、新米医師が赴任する病院の院長が、堤真一扮する当麻鉄彦であるという落ちで終わるのはちょっと好感でした

原作は全6巻の小説ですから、2時間あまりにするには無理があったのかもしれませんね。