高校時代に文化祭で見たきりの映画ですが、その印象は今だに鮮明に残っています。名作というのは本当に無駄のあるシーンがワンショットも無いというのが実感できる名作でした。
出だし、少年サンドロが走っています。ある意味彼が主人公なのでしょうか?一方で彼の父マルコッチ(ピエトル・ジェルミ)が運転する特急が疾走するカット、線路のスピーディなシーンが交互に繰り返されて、駅に入ってくる汽車に走り寄り父に飛びつく少年のシーンへ。躍動感あるファーストシーンに一気に引き込まれます。
物語はこのクリスマスイブの日から一年間を描いています。
酒好きなマルコッチはつい酒場で仲間と夜更かしを帰宅が遅れてしまう。その日たまたま娘が死産してしまう。さまざまなきっかけが折り重なってこの日を境に家族がばらばらになっていきます。
娘、仕事が見つからない長男、そして父、それぞれが幼いサンドレに内緒のことを口止めして話す。しかし、所詮、幼い彼は黙っていることができず、話してしまう。しかし、そのことが次々とわだかまりを解いていく展開は本当に胸が熱くなってきます。
大人であることゆえに言葉を交わさないためにそれぞれがばらばらになっている。しかし、それに気がつかず、結局幼い息子が潤滑油となって、次第に元に戻っていくさまがすばらしい演出で描かれているのです。
ばらばらになった家族がラストシーンでひとつに戻る、しかし父マルコッチはギターを奏でながら一人ベッドで息絶えます。
すばらしい名作ですね。どのシーンも物語に意味を成しているようで、全体のリズムも見事で、充実した画面作りを堪能してしまいます。これぞ名作ですね