「アメリ」
テレビ画面でしか見ていて、スクリーンを見逃していたジャン=ピエール・ジュネ監督作品をテアトル梅田20周年リバイバルで見ました。
テレビで見たときもびっくりするほどポップでキュートな画面展開に引き込まれましたが、やはりスクリーンで見ると格段のすばらしさにうっとりしてしまいました。
次々とコミカルに説明される登場人物の姿、町の様子、いや、それよりもアメリ誕生に至るナレーションの楽しいこと。そして続くタイトルの見事なこと。まさにフランス映画ならではのリズム感ですね。
画面の所々に細やかに配置された品物の懲りようや部屋の壁などの色彩演出のこだわりが、コミカルでおしゃれな画面展開にいっそうの魅力を与えて、リズミカルに物語が進んでいくのは本当に楽しい。
従来のジャン=ピエール・ジュネ作品とちょっと異なり毒のないひたすら明るいユーモアセンスがちょっと内気な女の子の恋物語を盛り上げて、ある意味サスペンスフルにストーリーにのめり込んでしまう。
さりげないアメリのいたずらが人々を幸せに導き、ふとした些細な疑問があっさりとしかもユーモア満点に明かされていく展開も本当に楽しい。
これでもかというほどの人物設定と場面展開がめまぐるしいにもかかわらず混乱してこないのは、繰り返し描かれるそれぞれのエピソードのたたみかけのうまさでしょうね。
まるでポップアートを見ているような不思議な映像感覚でラストシーンに盛り込まれていく様はまさに傑作といってもいいラブストーリーでした。やはりテレビでの印象通りの映画でした。
「オー・ブラザー!」
もう一本はコーエン兄弟の作品、こちらも見逃していた一本である。
やはりコーエン兄弟作品である。画面がそれとなく徹底的にこだわっている。今回の作品も1930年代のミシシッピー州であるがひたすら広がる黄色い草原、イエローオーカーの地面など黄色を主体にした画面づくりに徹底されている。そこで展開するのはコーエン兄弟ならではのちょっとブラックですが、脳天気なコメディ。このちょっと脇道にそれたアメリカ映画という感じの風刺コメディが何とも魅力的ですね。
画面が出る前にトントンというおと、やがて画面が移ると囚人たちが石をハンマーでたたき割っている姿が横一列に映し出される。広い黄色い大地、線路の敷石でしょうか、一直線に並ぶ石、そこにハンマーをうち下ろす縞模様の服を着た囚人たち。
と、カメラが引くと、そのうちの三人が草林の中に隠れてこちらに逃げてくる。この映画の主人公マックギル、ピート、デルマーである。
ここからこの三人のちょっとふざけたそれでいて憎めないロードムービーが始まる。
その道中に実在のミュージシャンの名前の黒人やら、ベビーフェイスのあだ名のあったギャングネルソンやら黒人を闇で罰していたクークラックスクロウの団体やらの出来事がさりげなく挿入され、時代を切り取ったブラックなジョークも楽しめる作品になっている。
あり得ないようであり得る、まさに作り話のような喜劇の連続に、笑いよりも、登場人物たちの今後が興味津々にスクリーンの中を追いかけていく。
あれよあれよと、知事の恩赦さえものにし、わかれかけた妻ともよりを戻さんとなったマックギル(ジョージ・クルーニー)と残る二人の前にそんな者は知らないと保安官が立ちはだかり、間一髪でダムの水で押し流されて助かるクライマックスには笑ってしまいます。
そして、三人はめでたし?それともまだまだ波乱?そんなエンディングが小気味よいおしゃれなアメリカンコメディでした。