くらのすけの映画日記

「シネマラムール」の管理人くらのすけの映画鑑賞日記です。 なるべく、見た直後の印象を書き込んでいるのでネタバレがある場合があります。その点ご了解ください。

映画感想「ライトスタッフ」「世にも怪奇な物語」「トラブル・イン・

ライトスタッフ

ライトスタッフ
はじめて見たのが約20数年前、良かった、というイメージしか残っていないのと、クライマックスロッキードに乗ったイエーガーサム・シェパード)が成層圏を越えてエンジンが止まり落下してくる瞬間に宇宙をのぞくシーンしか覚えていなかったのですが、今回公開は私がスクリーンでみたときより約50分長い3時間20分のオリジナル版でした。
初公開時のカットシーンは何カ所かあるのですが、なんと言ってもジョン・グレンが地球を周回中にホタルの光のような火の粉の中に包まれるショットが復活したのは最大の見せ場でしょうか。

やっぱり感動しました。人間ドラマとして優れているのも確かですが、宇宙競争に躍起になるアメリカとソ連の姿、危険を承知で夢に向かっていく男たちを見守る妻たちの複雑な視線などどれもが無駄なく丁寧に描かれていることに改めて感動してしまいました。

しかも、メインキャストそれぞれが誰一人として悲劇に見舞われない。この手の作品に必ず挿入される死のイメージはあくまで一つ外の世界で描かれ、それが妻たちに不安をもたらすことで物語に深みを与えてくる。
一方、今や少なくなったような男たちの世界としてのパイロットたちの連帯感、仲間意識も鼻につくほどにしつこくなく、ここぞという時だけ描かれるさりげなさもすばらしい。

クライマックス、結局、自分は一テストパイロットであるとロッキードをかって大空に飛び出すイエーガーサム・シェパード)の姿、それを見守る友人、そして宇宙パイロットとして飛び出していったゴードン(デニス・クエイド)の姿がいつまでも脳裏に残りました。しかもテーマ曲も抜群。やはり名作ですね。

でも、ラストシーン、なぜか涙があふれて感動してしまいました


世にも怪奇な物語
久しぶりに見直したのですが、ロジェ・バディムルイ・マルフェデリコ・フェリーニ等の監督作品のうち、最後のエピソードであるフェリーニ監督作品がダントツにすばらしいことに気がつきました。もちろん、最初のロジェ・バディム監督作品「黒馬の哭く館」も第二作目のルイ・マル監督作品「影を殺した男」もそれなりにレベルの高い一品ですが、フェリーニ作品「悪魔の首飾り」が群を抜いてオリジナリティにあふれていて、抜きんでています。

「悪魔の首飾り」については、ファンタジックな中に幻想的な映像が満載。動きの止まった人間の姿や、闇の中浮かび上がるようにボールを持った少女が現れるショットの不気味さ。サイケデリックなローマの町並みや現実と思えないセットの数々。冒頭シーンの近未来を感じさせる空港のシーンと、どのショットも独走性にあふれています。

ラストで、途切れた高速道路につっこんでいくシーンは覚えていたのですが、対岸にはロープのような者が張られていて主人公の首が切断され、それを少女が拾うショットでエンディングだったのは完全に忘れていました。

「トラブル・イン・ハリウッド」
レインマン」の名匠バリー・レヴィンソン監督の久しぶりの作品で、評判もそこそこだったので半ば期待で見に行きました。
本当に楽しかったです。ハリウッドの内幕を描いたちょっとコミカルなところもなきにしもあらずですがシリアスなドラマです。ロバート・デ・ニーロ演じる映画プロデューサーベンが映画製作のスタッフと会社社長やあるいは俳優たちとのトラブルに翻弄される姿を描いていきます。

できあがった作品のラストが過激すぎると映画会社の社長にいわれ、切れてしまう映画監督。その監督をなだめながら会社方針を満足させるべく説得するベン、あるいは、近日クランクイン予定の映画の主演俳優ブルース・ウィリスが髭を剃らないためにその説得に走り回る姿などが中心に描かれ、一方で妻のケリーとの離婚問題や愛娘の恋愛問題などで息つく暇もない姿がリアル感満点に展開していきます。

一歩間違うと切れてしまう寸前のプロデューサーの生活を微妙なバランスで演じるデ・ニーロが抜群にさえていて見応え十分。デジタル処理による細切れの映像を積み重ねながらめまぐるしく動く主人公たちの姿を映しだし、一方で家庭問題をじっくりと据えたカメラでとらえるなどバリー・レヴィンソンの演出の冴えもなかなかのもので飽きさせません。

右往左往しながらトラブルを何とかまとめようとするベンの姿がある意味コミカルでほほえましいのですが、その一生懸命さが実に切実に物語の展開を支えているさまが非常に好感。敏腕プロデューサーであるのに一歩間違うと隅に追いやられようとするハリウッドの現実もさりげなく見せ、そのリアリティがさらに物語に深みを与えてくれます。
シリアスながら、すんなりと見終わることができるなかなかの秀作だったと思います