単純におもしろい。しかも何の考えもなく楽しむならこれでいいかもしれない。ただ、この手の娯楽映画にどうのこうのというのはどうかと思うが、いかんせん、切れのない演出である。
原作を知るものとしては、まずあのグロテスクな展開をどういうふうに映像にするのかというのが一つの興味だったが、導入部で原作そのままにスプラッターな演出で一気にGANTZワールドに引き込んでくれる。よくもまぁ、遠慮もせずにあそこまでしてくれたものだと感心。
ところがそのあとがいけない。もちろん、原作も前半部分は若干繰り返しばかりになってやや説明がすぎる部分もないわけではないが、その欠点をそのまま映像に持ち込んだためか、どうも導入部のシーンが終わってからの前半部分がややだれてしまう。しかも、どうも演出にスピード感と切れが無いせいか、アクションとしてのおもしろさが今一つ伝わってこない。
原作を丁寧に踏襲していくだけの作品になっている。やはり、原作のある物を映像化するに当たってはいったん映像として消化しないといけない。それができていないのがなんとも残念。
松山ケンイチや二宮和也などそれなりに演技のできる俳優を使いながら、脇を演じる夏菜や加藤の弟役千阪健介などが今一つ精彩に欠ける演技。結局演技演出が不十分なのである。いくら下手な役者でも、しっかりと監督が演出すれば生きてくるのだ。それがなされていない。
そして、クライマックス。原作でも前半部分の一つのスペクタクルシーンなのだが、なんとも、予算が少なかったのか、集団演出をこなす力量が不足しているのか、あまりにもスケールが小じんまりしすぎている。導入部であれだけ思い切ったことをしたのだから、このクライマックスも押し切ってほしかった。それに、キャストもケチったのかこのクライマックスに人数が足りない。その上、CGシーンがなんともさみしい。もっとスペクタクルにド派手に締めてほしかった。
これでとにかく後半へということなのか?もちろん、原作のテーマはやや至上学的な部分もあるので、単純なエンターテインメントではないことは確かだが、それにしてももったいなと思う。
後半を見てから正当な感想が書けるかもしれませんが、今のところ原作のスケール感、壮大な娯楽性、奥の深いオリジナリティがこの映画では再現されなかったように思います。