くらのすけの映画日記

「シネマラムール」の管理人くらのすけの映画鑑賞日記です。 なるべく、見た直後の印象を書き込んでいるのでネタバレがある場合があります。その点ご了解ください。

映画感想「ウォール・ストリート」

ウォールストリート

前作「ウォール街」が公開されたのはバブルの絶頂期、昭和63年である。オリバー・ストーン監督は時代の息吹をその見事な感性で敏感に感じ取り、リアリティあふれるドキュメンタリータッチの映像で見事に作品として完成させた。そして、彼のそのたぐいまれな感性はその当時が絶頂期であり、脚本家としての力量も頂点であったかのように思える。さすがに60歳を越えて時代の息吹を感じる研ぎ澄まされた感性はやや鈍くなったのではないかと思える。そんな感想を今回の作品の映像に見られた。

物語は前作の続編。刑務所からゲッコー(マイケル・ダグラス)が出所してくるところから始まる。一方で父と確執のある娘ウィニーとそのフィアンセで投資銀行に働くジェイコブが今回の物語の中心になるのであるが、時代背景をややさかのぼりリーマンショック直前にもってきたオリバー・ストーンの意図はわかるが、古風なワイプやマルチスクリーンの多用、さらにデジタル処理によるスローモーションやアップの映像など最近流行の映像表現の限りを巧みに操りながら描く物の、そこに斬新さが全く見られない。

さらにジェイコブが遭遇する勤務会社の倒産、支援する環境エネルギーへのアプローチ、さらにはライバル会社に曳き抜かれるも裏切られるいきさつ、さらにはゲッコーとのからみ、ウィニーとのドラマなどがどれもポイントが希薄でまとまっていかない。全体のストーリー展開にどのエピソード森たくさんになりすぎて、意図するところが全く伝わってこないのである。

もちろん金融業界の投資合戦というエンターテインメント性や社会性、もオリバー・すとーんとしては描きたかったのであろうと思うが、一方でゲッコーとその家族の人間ドラマとしての厚みにある物語も描きたかったのだと思う。全盛期なら巧みに織り込みながら一本の作品として完成させたのであろうが、ややレベルダウンしているように思えた。

確かにおもしろかった、と感想を書きたいがなんとも今ひとつ取り立てられない凡作に仕上がったのは非常に残念。

それにしてもルイス・ゼイベルを演じたフランク・ランジェラも年を取ったものですね。懐かしい限りでした