くらのすけの映画日記

「シネマラムール」の管理人くらのすけの映画鑑賞日記です。 なるべく、見た直後の印象を書き込んでいるのでネタバレがある場合があります。その点ご了解ください。

映画感想「毎日かあさん」「ジーン・ワルツ」

毎日かあさん

毎日かあさん
昨年公開された「酔いが醒めたらうちに帰ろう」とほぼ同時期を描いた西原理恵子と夫鴨志田穣、そして子供たちの物語である。

「酔いが醒めたらうちに帰ろう」が非常に優れた作品だったので見劣りはするけれども、この「毎日かあさん」も心が暖かくなるいい映画だったと思います。小泉今日子永瀬正敏もそれぞれの役柄を好演しているし、なんといっても「酔いが醒めたらうちに帰ろう」同様、子供たちが何とも愛くるしくてかわいらしい。いずれの作品も子供たちの演技にほだされ、胸を打つ仕上がりなのは偶然というより実際の西原理恵子の子供たちがそのまんまだからではないかと思えます。

物語はまるで四駒マンガのエピソードが重ねてつづられていくように展開していきます。特にこった演出もみられず、小泉今日子扮する西原理恵子のあっけらかんとして不幸を笑い飛ばしていく豪快さと、天然のキャラクターがストーリーを引っ張っていく。対する夫の鴨志田はだめ男ではあるけれどもこの上もなく子供好きな愛くるしさが憎めないキャラクターとして登場するのがこの物語の良さですね。そして、この二人をつなぎとめるのが二人の子供たちの無邪気というよりあまりにも昔懐かしい子供たちのイメージでしょうか。

人物の描写は「酔いが醒めたらうちに帰ろう」とほぼ同じで、以上でも以下でもない。ただ、実在の人物そのままに頼った部分が往々にしてあるために、映画としての人物が生きてきていない。結局、作品としては凡作に終わっているのはちょっと残念。

こちらは、夫が死んでしまうまでを描いているのでちょっと、ラストが間延びしているように思えなくもありません。とはいえ、こんな家族がいたらいいなぁと思わせる胸が暖かくなるエンディングはやはり捨てがたい魅力でもある。少々薄っぺらいとはいえ、見て損をしたという感想にはなりません。


ジーン・ワルツ
チームバチスタの栄光」の海堂尊原作の医療ドラマなのですが、何とも古くさい演出、カメラワークに辟易した一本でした。しかも演技派俳優を集めたにも関わらず演技演出がなおざりなのかまかせっきりの演技で、せっかくの技量が生きていない。しかも、子役に至るまでそのまんまで素人臭い。まるで適当に作ったテレビのスペシャルドラマのごとくである。

原作はどうなのか知りませんが、クライマックスに台風がやってきて、人は足りない、停電する、患者がみんな分娩が必要になるってどうよ。しかも、余命幾ばくもない院長がはうようにでてきてピンチを救う。今時こんなとってつけたようなストーリー展開に観客は納得しませんよ。あまりにも推敲が足りない脚本。

どれをとっても、ひどすぎる一本でした。
大谷健太郎監督はそんな平凡な演出をする人ではないのですが、時間がなかったのかほとんどワンテイクで次々と撮影を進めたかのようなシーンが満載で、とってつけたような構図で人物をとらえたり、たいてい子供の演技というのは自然で目に付かないものなのですが、妙に鼻につく演技をしている。

正直、ここまで残念な作品に出会うのはまれというほどの出来映えでした。
おそらく、原作は産婦人科の医療問題に焦点を向けた社会ドラマ的な意味合いのドラマなのだろうと思いますが、その辺はほとんど描けていない。本当に残念な一本でした。

とはいえ、クライマックス、次々と赤ちゃんが産まれていくシーンはありきたりとはいえ、素直に感動している自分がいました。これは映画の出来映えというより動物としての本能による命の誕生への感動でしょうね。

がっかり