くらのすけの映画日記

「シネマラムール」の管理人くらのすけの映画鑑賞日記です。 なるべく、見た直後の印象を書き込んでいるのでネタバレがある場合があります。その点ご了解ください。

映画感想「マイティ・ソー」「小川の辺」

マイティ・ソー

マイティ・ソー
ヒーローもの映画の見せ場の壷を心得た演出に単調でかなり荒いストーリー構成もぜんぜん気にならない、本当に楽しめる娯楽映画でした。おもしろかったです。

神の世界か遙か彼方の宇宙に存在する伝説の世界。そんなところでも隣国との諍いは存在するという。いわゆるギリシャ神話的な設定を背景に描かれたマーベルコミックスの実写版で、特撮がふんだんに使われたエンターテインメントはまさにいまはやり。

しかも、主人公が操るハンマーが地球に投げ落とされた後のショットは「アイアンマン2」のエピローグで見せたショットを使ったサービス満点の組立が楽しい。

もちろん、本作品のエピローグでもお返しのごとく「アイアンマン」のキャラクターや小道具が登場。いったい、マーベルコミックの映画版はすべてみておかないといけないのかと思ってしまう。商売っ気満載である。

最初にも書いたが、見せ場のこつを心得ている。忘れていたが、監督はケネス・プラナーである。平凡なアメコミヒーロー物とはちょっと違うところがうれしいですね。しかも、ナタリー・ポートマンまででてるなんて豪華そのもの。

能力を奪われ地球に落ちてきた雷を使うヒーローマイティ・ソー。人間として振る舞うシーンは適当にアクションを交えて手短に納め、一方で彼のふるさとでは弟の謀略が進んでいるというストーリーの二重展開で観客を飽きさせない。そして、いよいよというところでソーに力が戻り、クライマックス。この西部劇のようなリズム感が実に心地よい。

首尾良く父の危機を助け、陰謀を巡らせていた弟との一騎打ちの中で地球との架け橋をハンマーで破壊し、決着をつける。神話の終了を描くという丁寧さはその後のラストシーンにつないでいくサービス満点。

地球でソーが惹かれたジェーン(ナタリー・ポートマン)との愛が残像のように残ってエンディング。これぞファンタジー。そして、エピローグに続く。
たわいのない話ながら、手を抜かない演出で見せてくれたのがうれしい一本でした。無精ひげのヒーローマイティ・ソーの汚らしくなくて良かった。ただ、浅野忠信はほとんど活躍していなかったような気がしますが。

小川の辺
原哲夫監督作品ということで、静かに情感いっぱいに展開する藤沢周平の世界はいつものことながら、現代に通じるどこかもの悲しさが漂います。

ただ、今回の篠原哲夫監督の作品にしては実に凡作。特に際だった心の葛藤などが伝わってこないし、兄と妹、剣のライバルとしての友情、父と息子、娘の感情、かなわぬ恋のゆくへなど、ドラマ性が今一つ画面から漂ってこなかったのは残念。

自然の風景や花、素朴な景色など篠原監督作品おきまりのショットは無いわけではないですが、パッと引き込むめりはりのある画面が無いために全体に淡々とした田舎の風景というイメージしか見えないのは残念。

新蔵と田鶴(菊地凛子)との淡い恋がラストで成就したかに見せるエンディングは本来もっとはかなくさりげなく描きたいところですが、いかんせん菊地凛子がどう見ても町娘か農家の娘にしか見えず、とても武家の娘に見えない泥臭さがミスキャストでしょうか。やはり、時代劇はある程度の様式美なのでキャストも美男美女でそろえないと決まってこない部分がある。

藤沢周平作品らしく、クライマックスにチャンバラシーンを組み込むことになるのですが、殺陣をつけた人が悪いのか、篠原監督のカメラ演出が悪いのか、いつものような緊迫感が今一つ伝わらなかったので残念。

まぁ、可もなく不可もないふつうの映画でした