「96時間 リベンジ」
前作で娘を拉致された主人公ブライアン。娘救出のために拉致した犯人を殺したがその殺された犯人の父親がなんと復讐のためにブライアンに迫る。つまり逆恨みである。
監督はピエール・モレルからオリヴィエ・メガトンに変わっているが、脚本は前作同様リュック・ベッソン、ロバート・マーク・ケイメンが担当、今回もハイスピードなアクションでめまぐるしい展開、とにかくおもしろかった。
敵のムラドがブライアンの居場所を突き止め、その妻レノーアと娘キムにターゲットをあわせる。妻と一緒に拉致されるファーストショットからキムがブライアンを補佐して追っ手から逃げながら敵を追いつめていく。
何カットに分割したのかと思えるような細かいカットの連続で画面全体があわただしい。デジタルカメラならではの編集スタイルであるが、拉致されたブライアンが搬送される先を音や感覚で記憶していくおもしろさとキムがブライアンに合流する下り、そこから妻のレノーアを助け出すアクションシーンは絶品。
たしかに前作は明確なストーリーの構成で中身もおもしろかったが、今回はひたすらアクションに終始する。その点では若干迫力不足か。
それでも、90分あまりを駆け抜けるような勢いでどんどん前に進むおもしろさはアクション映画のお手本のようなもので、少々、太り気味のリーアム・ニーソンが華麗な格闘戦で次々と敵を倒すのは痛快。細かいカットで処理しているのは動きの緩慢さをカバーするためといえばそれまでだが、会話シーンを含めすべてのショットが非常に細かいので目立たない。
とにかく、今おもしろい映画を見るならこれというおすすめの出来映えのアクション映画になって完成していました。
さて、ラスト、キムの彼氏ジェイミーが登場してエンディングですが、その前にムラドを最後にしとめるシーンで二人の息子がいるというわざとらしいシーンが挿入されている。まさかジェイミーが?と思うのは考えすぎ?でもとにかくおもしろい映画でした。大満足
「ドラゴンゲート 空飛ぶ剣と幻の秘宝」
典型的な香港活劇の傑作。とにかくおもしろいの一言につきる。ワイヤーワークとCGを所狭しと駆使し、その中で次々と新兵器によるアクションが展開する。始まってすぐからラストシーンまで全く飽きさせることがない展開はもう特筆もの。3Dメガネのしんどさなどいつのまにか吹っ飛んでしまうのです。少々お話が荒くてわかりにくいのと、一部の登場人物の関係とかが混乱するのが難点かもしれないが、そんなものはこの手の娯楽映画に無関係と言わしめるほどの迫力がある。何でおもしろいのと思っていたら、監督はツイ・ハークだった。
物語は明の時代、中央では権力争いが行われ、二大勢力の東尚と西尚の確執がどんどん高まってきている。そこへ、世直しの集団を組織するジェット・リー扮するジャオたちが登場。ファーストシーンから一気にはでなワイヤーワークによるアクションが炸裂するのだからもう最高。
そして、次々と胡散臭い連中が登場し、それぞれが個性的な武器を駆使して中央官吏に戦いを向けていく。もちろん、西尚の督師ユーがくせ者で、やたら強いし、最初で登場する皇帝の子供を身ごもった女性スーが最後の最後で実はユーの密使で金糸とよばれる蜘蛛の糸のような武器を張り巡らせるクライマックスは絶品。
さらに、砂漠の真ん中にある埋もれた宝の宮殿を掘り起こす物語に絡めて、迫ってくる砂嵐の竜巻のスペクタクルもどんどん展開を盛り上げてくれる。もちろん、完全なCGだが、見せ方が非常にうまいので引き込まれていくのです。
それにジェット・リーたちがやたら強い上に、少々斬られたり刺されたりしてもそのときはダメージになるが、なぜかケロリと治って戦う下りはつっこみどころも満載。でも、それでもそんな理屈はほうっておいてもおもしろいのです。
結局、督使のユーは殺されるが、彼にそっくりの男が中央に入り込んでうまく入れ替わってエンディング。ジャオたちもいずこかへ去っていくラストシーンもこの手のエンターテインメントの常道でとっても爽快。本当におもしろい香港エンターテインメントに久しぶりに出会いました。
「もう一人のシュークスピア」
ローランド・エメリッヒが描く宮廷物。しかも謎に満ちた人物ウィリアム・シェークスピアの物語。正直、しんどかった。というか、三本目で疲れていたのもあって導入部が入り込めず、人物関係が把握しきれてないままにイギリス王室のどろどろの世界を読み解いていくのに必死になってしまいました。
映画が始まると現代のビル群を俯瞰でとらえ、とある劇場へ。そこで一人の男が謎に満ちたシェークスピアの物語を語り始める。
エリザベス女王の後継に直系の子孫をすえるべきだとするエドワード伯とスコットランド王を後継にしようとするセシル卿との確執の中で、芝居を民衆の煽動に利用することを考えるエドワードとそれを恐れるセシル卿との対立、若いエドワードと若きエリザベスとの恋、さらにその私生児の物語が背景に脈々と描かれる。そんな背景の中でエドワード伯が著作する戯曲が自分の名を出さずにベンによって次々と上演。しかし、観客が求める作者の名に役者であるウィリアム・シェイクスピアが名乗りを上げたために、発表されるエドワード伯の戯曲はシェイクスピアの作とされて世に広まって行く。
権力争いの物語が複雑に入り組んでくる上に、それぞれのキャラクターの描写が弱い。さらに、エドワードの若き日、ベン、シェイクスピアなどの役者の顔立ちが実によく似ている中でストーリー展開が整理し切れていないように思う。見ているうちに何となく展開は読めるものの、人物同士の性格付けが弱いために切れが悪く盛り上がりきらないように思えるのです。シェイクスピアの物語が宮廷の確執の中にまぎれて埋もれてしまったような気がします
ラストシーンは、エリザベス女王からエドワード伯とエリザベスとの間の私生児サウサンプストン伯の恩赦のために戯曲の本当の作家は伏せるようにと口止めされたり、エドワードもベンに原稿を預けて息を引き取ったり、スコットランド王ジェームズがイギリス王についたりして物語は終わるが、歴史物語を題材にしたフィクションとはいえ、ちょっと複雑に絡ませすぎた切なすぎる物語になった気がします。
スペクタクルなシーンを仰々しい俯瞰撮影で(たぶんCG)で描くというエメリッヒ監督ならではの得意シーンも随所に見られ、大作であると誇示するが、これは人間ドラマであり、こういう大きなシーンが必要かどうかは疑問。
なかなかいい映画ではあるのですが、もう少しそれぞれのプロットを明確に整理すべきだったかなという気がします。