くらのすけの映画日記

「シネマラムール」の管理人くらのすけの映画鑑賞日記です。 なるべく、見た直後の印象を書き込んでいるのでネタバレがある場合があります。その点ご了解ください。

映画感想「ゴッドファーザー」

ゴッドファーザー

およそ30年ぶりにスクリーンで見ました。3時間を超える大作ですが、始めて見た時同様、全然退屈しない。やはりマリオ・プーソとフランシス・コッポラの脚本の完成度の高さゆえでしょうか。

今回の再見で、私はこのドン・コルレオーネに父の理想の姿を見たような気がします。ファミリーを守るために周囲の人々から信頼を得、頼りにされ、そして時には鬼となる。しかし、すべては家族を守るためにのみその行動に徹する姿こそ父親としての理想の姿だと思えるのです。

映像のすばらしさとか、演出のすばらしさとかはさすがにここまでくると私のような凡人には生意気な分析はとうていできません。それは巨匠フランシス・フォード・コッポラのなせる卓越した演出手腕が完成させた一本の傑作ゆえであり、マーロン・ブランドロバート・デュバルアル・パチーノジェームズ・カーンなどなどそうそうたる俳優たちの奏でる家族の物語です。
そして、描かれるのはアメリカという国にやってきて必死で自分たちを守ろうとする攻防であり、その結果生まれる他のファミリーとの確執なのです。

長年、裏社会で信頼を築き政界にも力を得たドン・コルレオーネ。次第に忍び込んでくる麻薬という新しい波。その波に逆らおうとするも時代のうねりに次第に堅牢なファミリーも崩れ始めていく。それはドン・コルレオーネだけのファミリーではなく他のファミリーにも押し寄せてきた巨大な時代の流れなのです。そして、それが安定していた10年間に終止符を打ち、次第に争いの中で弱肉強食と権謀術数が渦巻きはじめ、人間と人間という信頼の絆はすべてビジネスとしてドライに変貌していく。

長男ソニージェームズ・カーン)が殺され、信頼していた部下たちも殺され、自分も銃撃されるにいたり、時の流れに逆らうことの限界を知ったドン・コルレオーネは寄る年波もあって三男マイケル(アル・パチーノ)に地位を譲る。そして、自ら死を迎える頃にはマイケルは確固としたゴッドファーザーとしてかつて父が歩んだ孤独な地位を守るために妻にさえもうそを付くことになる。

映画はゴッドファーザーとして部下たちと語るマイケルの姿をドア越しに見ている妻から次第にドアが閉じられて終わります。これからの波乱に立ち向かうマイケルの孤独が見事に描かれるエンディングにはうならせるものがある。これこそ名作の貫禄でしょうね。