くらのすけの映画日記

「シネマラムール」の管理人くらのすけの映画鑑賞日記です。 なるべく、見た直後の印象を書き込んでいるのでネタバレがある場合があります。その点ご了解ください。

映画感想「幕末太陽傳デジタル修復版」「宇宙人ポール」

幕末太陽傳

幕末太陽傳デジタル修復版」
日活が100周年を記念しての事業として企画したのがこの作品のリマスター修復である。すでにオリジナルネガもなく、所々黒フィルムになっているのを可能な限りオリジナルに戻した貴重なリマスター。しかも、フィルムの持つノイズを完全に取り除かずフィルムのもつ美さえ追求した全く頭が下がるおもいの作品で、今回の必見の一本なのです。

一昨年、この作品をホール上映で見て、その傑作ぶりを納得したものですが、今回再見してみるとその真価がさらに理解できた気がします。なんとも、日本映画史、屈指の傑作とはよくも言ったものである。その映像展開のリズム感、オーバーラップしていくエピソードの数々、そして、なんといっても川島雄三監督の粋というものが随所にちりばめられている。見ていて、背筋が寒くなるほどにそのすばらしさに恐れ入ってしまった。しかも、今回二度目の鑑賞ですが、見れば見るほどにうならせてくれる。

冒頭の品川で主人公佐平次が時計を拾う下りからタイトルバック、現代の品川の解説から一気の時は江戸末期へ。
そこであれ夜あれよと展開するシャレた物語の数々が時に群像劇のごとく、時に人情ドラマのごとく、そして時に男同士の心根の酌み交わしのごとく交錯していく。

絶妙の機転の良さでその場その場を切り盛りしていく佐平次の痛快無比な物語に、幕末の攘夷運動まで絡んで、さらには若旦那と女中の恋物語までてんこもりの警戒さ。間のとりかた、シーンからシーンへの組立のうまさ、ロングとアップを巧みに繰り返す演出のおもしろさ、当然、フランキー堺らキャストの目にも鮮やかな演技。背後に流される太鼓などの音の効果のおもしろさ。どれもこれもがうまくコラボレートするとここまでいくかと思わせる絶品。

何度も何度も見直して、さらに楽しんで、さらにそのすばらしさに絶句する。これこそが傑作というなにふさわしい一本だと思います。

修復部分については、前回みたフィルムのレベルのそれほどひどくなかったので、「羅生門」を見たときほどの驚きはありませんでしたが、自然な形で最良のレベルに完成させてくれたスタッフの方々に拍手したいと思います。

宇宙人ポール
「未知のと遭遇」と「スターウォーズ」のパロディをメインにした典型的なアメリカンコメディのおふざけ映画である。

ある家で一匹のポールという犬が外へ出ようとしているところから始まる。外へ出ると光が降りてきて・・・どっかで見たようなファーストシーンから一気にタイトル。この導入部はおもいっきり期待させる。

そして、宣伝にも語られているようにSFオタクの主人公二人がドライブをしているとヒッチハイクをしているエイリアンポールと出会い、乗せる羽目になる。ところがこのポールを追う政府のエージェントが執拗に彼らを追い、途中で出会ったRVカーのキャンプ場の管理人の娘がやたら狂信者で、その娘も同行することになってその父親が追っかけてくる。

そんな追っかけ劇を中心にエイリアンのポールに絡んだどたばた劇があちこちで展開。冒頭でにらまれたたちの悪い二人の男にも出会って七転八倒のギャグストーリーがあれよあれよと続くが、どうも笑いが単発でストーリー全体に流れがない。そのために次第に笑いのパターンが単調になってしまう。

結局、クライマックスは「未知との遭遇」のラストの丘でポールを迎えにきた宇宙船に乗って帰るシーンとなる。まぁ、ここは予想してしかるべきだし、どこか「未知との遭遇」と同じカット割りもみられるし母船が飛び去るシーンは「スターウォーズ」のファーストシーンの帝国戦艦のシーンに似ているし、それはそれで楽しめる。

この手のパロディギャグ映画はそれで楽しめればいいのですが、やはりそこにもう一工夫とストーリー全体に軽快なリズムがあれば秀作になる。それがいわゆる緩急というものだと思うけれどもその辺が今一つ物足りないのが残念。

ポールのキャラクターも妙に悪おやじ風でかわいいのだが、一つ一つの笑わせたいエピソードの数々が生き生きしていないのがもったいない気がする作品でした。まぁ、あそこがあのシーン、あのパロディと探す楽しみで見る文には十分な娯楽映画だったと思います。