くらのすけの映画日記

「シネマラムール」の管理人くらのすけの映画鑑賞日記です。 なるべく、見た直後の印象を書き込んでいるのでネタバレがある場合があります。その点ご了解ください。

映画感想「スーパー・チューズデイ〜正義を売った日〜」

スーパーチューズデイ

一つ一つのプロットがオーバーラップするように組み立てられた見事なストーリー展開でぐいぐいと引き込まれる一級品の政治サスペンス映画でした。おもしろかった。

一人の男スティーヴンがこれから行われるオハイオ州の大統領予備選挙演説の準備のため舞台のマイクテストに向かっている。民主党の大統領候補マイク・モリスの選挙事務所のトップポールの右腕で、優秀なブレインでもあるスティーヴンの実力は敵方の選挙参謀ダフィからも一目おかれている。

緊張したシーンのあと軽いタッチのサスペンスフルな音楽とともに映画が始まると、いつの間にかこの選挙戦争の中で繰り広げられる人間同士の巧みな頭脳戦にはまりこんでいく。原作は戯曲であるが、物語のエッセンスの緊張感を見事に映像に昇華している演出感性にまず驚かされる。ゆっくりしたテンポからいつの間にかハイテンポなスリリングなリズムに切り替わっていく流れが絶品です。

モリスが何事につけ信頼を寄せるポール、さらにその右腕のスティーヴン。さりげなく一人の女性モリーがスティーヴンに近づく。彼女はまだ入所間もないインターンである。これということもなくスティーヴンとモリーはベッドをともにする。いつも思うが、アメリカ映画に登場する人々は意図も簡単にベッドインするなと思う。

ある日、スティーヴンに敵方の選挙参謀ダフィから会わないかと電話が入る。迷ったあげく、出かけると、こちらへ寝返るようにといわれるが、もちろん断る。後日、ポールに報告するが、その場はとりなしてもらう。

ある夜、スティーヴンとモリーがベッドにいると電話が。スティーヴンが自分の電話だと誤ってとってしまうが、なんとモリー宛にモリスからの電話であると知る。モリーは以前、モリスにレイプされ、妊娠、その中絶費用に連絡をしたのだという。大変なスキャンダルをつかんだスティーヴンだが、その直後、ダフィと会っていたことが知人のジャーナリストアイダにばれ、脅迫される。

実はリークしたのはポールで、忠誠心をなくしたスティーヴンを切るべくリークしたと暴露され、首になるのだ。
一方モリーの中絶費用はスティーヴンが立て替えた。

スティーヴンは首になった仕返しのためダフィの元へ。しかし、ここまでのことはすべてダフィの画策だった。敵のブレーンをなきものにするために首にさせるか、寝返らせるかの手段に出たのだという。当然、ダフィにも断られ、スティーヴンは行き場を失う。

程なくして、モリーが自殺。腹をくくったスティーヴンはモリスを脅し、ポールの解雇と自分の復職、さらにスティーヴンに近づいてきた有力代議士トンプソンの副大統領起用を約束させるのだ。

こうして、一時は不利に陥ったモリーオハイオ戦で勝利し、スティーヴンはポールの後がまに入ってモリーの参謀となる。右腕にはかつて自分の下にいたベンを採用。ベンのところに一人の女性がまるでスティーヴンにモリーが近づいたかのように近づく。

次の選挙演説の準備にマイクテストをするスティーヴン。カメラが彼の顔を真正面にとらえゆっくりとよっていく。「選挙戦の勝利の秘訣は・・・」の言葉が被さり、それに答えるのか答えないのか沈黙の意味ありげな複雑な表情のスティーヴンのクローズアップでエンディングである。

戯曲の映画化なので繰り返しや舞台調の演出も施されていると思うが、ジョージ・クルーニーという人は音や音楽の使い方が実にうまいなぁと感心します。冒頭のオープニングでの選曲のうまさ。ラストにかぶる記者の言葉、中盤にバーでスティーヴンとダフィが会談するときのバーの歌手の歌声など随所に映像のテンポに合わせて絶妙なリズム感性で音が挿入されます。

作品全体としてはこじんまりしていますが、凝縮されたサスペンスのおもしろさに満腹感を味わえる一本でした。