くらのすけの映画日記

「シネマラムール」の管理人くらのすけの映画鑑賞日記です。 なるべく、見た直後の印象を書き込んでいるのでネタバレがある場合があります。その点ご了解ください。

映画感想「バトル・シップ」

バトルシップ

アメリカでは予想を下回って不人気だったという超大作SF映画ですが、そんなことはない結構単純に楽しめました。

要するに、懐かしい西部劇の物語構成を踏襲したストーリーなのです。CGが発達し、次々と3D映画が反乱するようになると、次に求めるのは古き良き時代の娯楽への懐古趣味なのでしょうか。でもお客さんが本当に娯楽映画に求めるのはこういうことかもしれませんね。

冒頭、どうでもいいような主人公アレックスがバーで見初めた女性サムを口説くという軽いシーン。主人公の兄ストーンは優等生的な軍人で、口説いた女性の父親は海軍提督、とまぁ、あまりにもどうでもいいけど、こんな設定昔からあったようなと懐かしい。

2005年に地球と似た条件の惑星を発見したNASAはこの惑星とコンタクトをとるべく、それまでの宇宙通信のパワーの5倍の出力の設備をハワイに建設し接触を試みる。という前段階がさりげなく語られる。

さて、アレックスは例によって海軍に配属、いまや海軍はかつての巨鑑時代ではなく、機動性に優れ、コンピューター制御の武器を備えた駆逐艦がその主力であり、その駆逐艦の艦長に。そして、これまた例によってアレックスは破天荒な性格の持ち主という設定。しかし、このアレックスのキャラクターは十分に描かれていなくて、ふつうの人物に見えるような気がするのですが、これもすぐにバトルシーンの見せ場に突入するのでこだわらなくてもいいかとも思えます。

地球からの通信に答えたエイリアンが巨大な宇宙船を送り込んできて、たまたま海軍演習中の多国籍の連合艦隊と戦闘になる。ハワイ沖を舞台にし、アレックスと近づくのが日本人のナガタというのはこれもまたお遊びかこだわりか。ここからはもう、見せ場の連続でほとんど息をつかせないし、CGのみに頼らずにハイスピードなシーン展開を繰り返してどんどん話が前に進んでいく。

並外れた力で押してくるというより、意外と地球の砲弾が敵を粉砕するので単純なバトル戦のおもしろさが次々と目の前で展開していく。

一方エイリアンは次の応援を呼ぶために地球が設置した通信機器を利用して連絡をしようとしているというが、地球までものすごい早さでやってきたわりにはお粗末である。しかも5機で進入してきたにもかかわらず1機は途中で自爆し、破片が世界中に散らばるという派手な導入シーンもある。

敵を破壊しながらも自分らの駆逐艦も破壊されてしまった主人公たちは最後に今や記念鑑となっている戦艦ミズーリを動かすことにし、式典にきていたかつての英雄たち、つまり老年の軍人が参加、さび付いたミズーリを動かして決戦に望む。とまぁ、題名の由来でもあるのですが、飾りに近い戦艦に実弾が残っているという設定もどうかとおもいますが、そんなものは脇に置いて、堂々と動き始めるミズーリの偉容がCGとはいえ大迫力です。

結局、面倒な理屈はほどほどにして、日本人ナガタとアレックスが力を合わせて敵のマザーシップの巨大戦艦をやっつけたものの、敵の砲弾が目の前に迫りあわや二人の命はこれまでかと思いきや、バリヤーが解けてやってきた戦闘機に間一髪救われる。まるでインディアンに襲われて、最後の弾も切れてしまって、これまでかと思ったところに騎兵隊がやってくるという西部劇のクライマックスのごときである。

そして、これであっさりとエイリアンはすべて撃退したようで、表彰式のシーン、主人公がサムと結婚させてくれと提督に迫るとぼけたシーンのあと延々とエンドクレジット。

さらにクレジットの後、場所はスコットランド。エイリアンの最初の一機の破片がここにも落ちていて、見つけた少年たちが大人と協力して穴をあけるとエイリアンがでてきたようなショットで本当のエンディングである。

アメリカ映画も丸くなったようで、この作品、浅野忠信扮する日本人の軍人も最後まで主人公とほぼ同等に扱うし、落ちてきた宇宙船の分析は中国からの報告を信用するし、東洋に対する気遣いが見え隠れする。ある意味、世界のリーダーとしての強さが薄れたといえなくもないですが、それはまた時代の流れでしょう。

ストレートな物語と分かりやすい展開、理屈はそっちのけで見せ場をどう楽しませるかに終始した演出がこの映画のおもしろさを決定づけた気がします。