くらのすけの映画日記

「シネマラムール」の管理人くらのすけの映画鑑賞日記です。 なるべく、見た直後の印象を書き込んでいるのでネタバレがある場合があります。その点ご了解ください。

映画感想「関の彌太ッぺ」「Black & White/ブラック & ホワイト

関の彌太っぺ

「関の彌太っぺ」
今や死語になってしまった、男っぷりとか、気っぷの良さとか、粋、などというものがまだまだ人々を感動させていた頃の純粋に心に感動を呼んでくれる名作でした。

6回も映画化されてこの作品が7回目ということですが、ラストシーンがとってもいいのです。弥太郎をかたって十年前の恩を売ってお小夜を嫁にしようと入り込んだ弟分の森介を涙で斬って捨てて、暮れ六つに二本松で待つ先日痛めつけた親分衆との決闘の場面へと向かう。その直前、一目お小夜に会うためにお小夜の家に行き、素性をあかさずに別れを言うが、ふとお小夜にかけた言葉に子供時代の思い出をよみがえらせたお小夜はかつての恩人が弥太郎だと気づき後を追う。

橋の下に隠れる弥太郎の彼方にお小夜が走り去っていくシーンの構図の美しさ、そして、暮れ六つの鐘がゴーンとなる中画面のど真ん中を約束の場所へ向かう弥太郎のショット、ゴーンという鐘の音が繰り返され、編みがさを投げ捨てて彼方へ消える寸前で暗転エンディング。

お小夜との別れのシーンで、花が咲く中での別れの画面の人物の配置、十朱幸代が、中村錦之助が、シネスコの画面と咲き誇る花の隙間に見え隠れし、次第に心が通じていく下りには涙があふれてしまいました。

何のメッセージも重いテーマもありませんが、純粋に人々の心に訴えかける暖かい人間の感情。ストレートに語りかけてくる人間の情。娯楽映画の定番といえばそうかもしれませんが、今の映画に一番失われてしまったものではないでしょうか。これが本当の娯楽の王様としての映画の存在意義だと思うのです。

ラストシーン、思わず拍手したくなってしまった。

それにしてもこの映画を見ると映画監督というのは人それぞれ好みのシーンというものがあるなぁとつくづく思います。山下耕作監督は、叙情あふれるようなショットが実に多い。この映画でもはっとするような夕焼けのショットや、さりげなく道ばたに花が咲いていたり、庭に咲き誇る花を効果的に演出に使ったりする。しかも横長のシネスコ画面に実に美しく人物を配置し、さりげないほど平凡なのに、なぜかすごくきれいに感じてしまうのです。

まだ人間同士の心が本当にお互いに暖かく通じあっていた時代の名作の一本ではないかと思いました。フィルムが抜群にきれいだったのもうれしかった。

「Black&White ブラック&ホワイト」
マックGという監督は「チャーリーズ・エンジェル」などでも軽快な画面づくりと娯楽指向の演出でとっても好きな監督なのですが、今回の作品は最低でした。

脚本に全く品がない。登場人物のキャラクターも実に下品である。ストーリーについては完全にB級レベルでそれ以上に工夫は見られない。軽いタッチでとんとんと笑わせてくれる映画かと思ったのですが、見ているうちにばからしくなってしまいました。

ストーリーにこだわることはないと思いますが、ローレンスの友人のトリッシュをもっとおもしろく描いたらこの映画一級品のコメディになった気がします。主人公のFDRとタックが別にCIAの敏腕エージェントにする必要が全くないストーリー展開が本当にもったいない。

二股を平気でかける女ローレンスを受け入れるか、お互いに相手の行動を知りながらまるでローレンスを見せ物のように監視するFDRとタックの趣味の悪さを受け入れるか。SEXする現場まで立ち入って牽制する物語にはさすがに余りに芸がない脚本というほかありません。

リーザ・ウインザースプーンという女優さんは嫌いではないのですが、この映画では全く光っていないし、魅力的に見えない。さらにクリス・パイントム・ハーディの二人のイケメンも今一つカリスマ性に欠ける人物として役柄を演じている。

背後から迫ってくるハインリッヒなる敵方の迫力も緊迫感を生み出さないので、ラストでハッピーエンドになるものの、とっても薄っぺらい出来映えでエンディングなのです。

もう少し作りようがあったように思える映画で、設定やストーリーについてもおもしろく作れると思うのですが本当に残念な映画でした。