くらのすけの映画日記

「シネマラムール」の管理人くらのすけの映画鑑賞日記です。 なるべく、見た直後の印象を書き込んでいるのでネタバレがある場合があります。その点ご了解ください。

映画感想「ダークナイトライジング」

ダークナイトライジング

バットマンシリーズの最終章、クリストファー・ノーラン監督作品でこの夏洋画の最大の期待作を見てきました。

前作「ダークナイト」が群を抜く傑作であり希代の名優ヒース・レジャーの好演もあって単なるアメコミヒーローものを越えたドラマティックな作品に完成していた。その後を継いだ今回の作品に期待が集まらないはずはないのですが、さすがに気負いすぎたのもあってか前作は越えられなかったというのが正直な感想です。

とはいえ、今回の作品も3時間に迫る長尺にもかかわらず全く間延びしないのはクリストファー・ノーランのたぐいまれな音や映像に対する感性のすばらしさによります。ストーリーテリングに見事なリズム感を生み出し、ドラマ性のある地味なシーンにはハイテンポの音楽を投入、一方の派手なアクションシーンは映像のスピード感で一気にひっぱっていく。この映像の緩急と音の緩急を織り交ぜた演出はさすがに群を抜いた出来映えになっている。

クリスチャン・ベイルモーガン・フリーマンゲイリー・オールドマンなどのレギュラー陣はもちろんですが、対する女優陣にもアン・ハサウェイ、マリオン・コテイヤールを配して見事なコラボレーションを実現、重厚なドラマをさらに引き立てている。

物語は前作で悪役として姿を消したバットマン、英雄となったハービー・デントの功績ですべての犯罪が一掃されたゴッサムシティにテロリストベインが登場、町はかつての悪の巣窟となり、罠にはまって破産したブルース・ウェインバットマンとして立ち向かうもベインに叩きのめされてしまう。

派手な科学兵器はあまり前面にだしてこないのがこのシリーズの特徴ですが、その分、非常に何層にもつみ重ねられたドラマがストーリーを牽引していく。ただ今回、悪役に狂気的な花がない。たしかにベインは口に異様なマスクをつけて不気味さはただようが視覚的に地味で非人間的な迫力に欠けるのである。そのために作品全体が非常に地味な画面になってしまい、ドラマ性を重視した展開と相まってバットマンも引き立たなくなってしまった。

アン・ハサウェイやマリオン・コテイヤールの華やかさも影が薄くなってしまったのが本当に残念。

こうしてみてみると前作のヒース・レジャーがいかに凄みがあったかが改めて納得させられてしまいますね。
もちろん、今回の作品も最初に書いたように本当におもしろいし、目を離せないほど無駄なく完成されていると思いますが、何かが足りないのです。

ラスト、核爆弾を阻止するために溶鉱炉へ運ぶ時間がなくなりバットマン自ら海上まで運んで自爆して終える。このシーンはちょっと陳腐すぎていただけないなぁ。さらにエピローグで刑事になったジョンがブルース・ウェインから託された場所に行くとバットマンの科学兵器が残され、自分はロビンという名を与えられている。いずこかの保養地ではフォックスがくつろぎ、その前にセリーナと歓談するブルース・ウェインがいるというシーンでエンディング。

三部作の最終章を悲劇的な幕切れと次への未来を託して終わらせたクリストファー・ノーランの意図は分かりますが、壮絶な最後にしてはちょっと迫力不足だった気がしないでもないかな。期待が大きすぎたためにその大きな期待度まで作品が追いつけなかったということですね。でも本当におもしろい映画でした。