前作「ミッドナイト・イン・パリ」がよかったので、さらに期待が膨らんだが、今回はちょっとラストの処理がしんどいかな?という感想です。でもバストショットで繰り返す会話のショットから感情が高ぶるとクローズアップで見せるカメラ演出、くるくるとめくるめくように流れる長回しのカメラワークが物語のリズムを見事に作りだしていくし、いつものことながら音楽センスが実にすばらしいので冒頭のタイトルから一気にウディ・アレンの世界に引き込んでくれる。
今回は名匠ヴィルモス・ジグモントのカメラも美しく、落ち着いた色調で統一されたカラーとロンドンの情緒を映し出す車や調度品の使い方はさすがに見事なものである。
物語は平凡な結婚生活にややマンネリ化した夫婦がそれぞれのアバンチュールを求めて右往左往しながら恋愛ゲームをするというもので、下手に作ると日本的な昼ドラの世界になるところを実に洒落た都会的な物語にまとめているのはさすがに典型的なウディ・アレンワールドのすばらしさである。
初老のアルフィは妻に魅力を見いだせなくなり、30代に戻るべくスポーツカーを乗り、妻と別居し、なけなしの蓄えを使って女優崩れの娼婦シャーメインを妻にする。ジムに通ったり若者たちの行く酒場へ行き、バイアグラを飲み、悪くいうと若作りをして人生のやり直しをする。
医者になりきれず売れない作家のロイは倦怠期の妻サリーと子供を作ろうともせず、窓から向かいに見えるエキゾチックな美女ディアにほのかに気を持ち、図々しくも強引にアタックする。
一方アルフィの妻ヘレナもいかがわしい占い師クリステルを信奉し、そこで知り合った男と親密になっていく。
ロイの妻サリーも勤め先の画廊の主人でイケメンのグレッグにひそかな恋心を抱き不倫を承知で気持ちを向ける。しかし、グレッグはサリーの友人の画家と懇ろになってしまう。
シャーメインは予想される展開で若い男と親しくなりアルフィはただの金づる的に接し始める。
ロイは有能な作家の友人が事故にあって死んだという知らせに、その男の原稿を盗んで次の本に出版しようとし、出版社も大乗気になったが実は死んだのはその友人ではなくその友人は昏睡状態で、それも好転の兆しを目の前にしてディアとの恋どころではなくなる。
まさに題名の通り恋愛狂騒曲であり、軽い音楽と独特の感性で演出される映像が本当に都会的な洒落たリズムを生み出してとんとんと物語が展開する様はさすがにウディ・アレンの真骨頂である。
しかし、それぞれの結末がさりげなくおしゃれに締めくくっていくいつものテンポが終盤にちょっといびつになってしまい、ロイとディアの展開、アルフィとシャーメインの結末、サリーとグレッグの行く末それぞれの締めくくりが処理し切れていない気がし、そのあとのヘレナと男のキスシーンでエンディングへの締めくくりに微妙なリズムの乱れがあるのが残念。
ただ、やはりウディ・アレンの感性はあの年になっても他の映画人ちょっと違うものがあり、そのオリジナリティは十分に楽しめる一本でした。