くらのすけの映画日記

「シネマラムール」の管理人くらのすけの映画鑑賞日記です。 なるべく、見た直後の印象を書き込んでいるのでネタバレがある場合があります。その点ご了解ください。

映画感想「由宇子の天秤」「カラミティ」

「由宇子の天秤」

映画としては傑作でした。ストーリーの構成、深く踏み込んだテーマ、そしてサスペンスのような展開、見事ではありますが、いかんせん

重いし、暗い、希望が見えないラストも辛い。監督は春本雄二郎。

 

一人の男性がリコーダーを吹いていて、彼をカメラが捉えている。傍にいるのはドキュメンタリー作家の由宇子である。取材しているのは3年前いじめで自殺した女子高生の父長谷部だった。取材が大詰めとなり、女子高生と男女の関係があったと騒がれ自殺した矢野先生の母親や妻との取材のアポも進む中、番組完成は大詰めだった。

 

由宇子は、塾を経営する父政志と二人三脚で、塾の講師も掛け持っていた。この日も生徒達に慕われながら塾で教える。昼はドキュメンタリー作家として真実を追い続け、この日、矢野先生の母と娘とのインタビューを終える。さらにその母の希望で、母が一人住まいするアパートへ取材に向かう。そこで見たのは、警察の捜査以上にネットなどの中傷で居場所を失った厳しい現実があった。矢野先生と女子高生との関係は全くの嘘で、何もかもが作り上げられた物だった。由宇子は、先生の妻のところへ行き、そこで娘が学校でいじめられている現実も知る。

 

そんな頃、父の塾で、一人の生徒小畑萌が倒れる。由宇子が彼女から妊娠していることを聞かされ、しかもその相手は政志だと打ち明けられる。病院へ連れていくべく萌の家にやってきた由宇子は、ガスも止められどん底の生活をしてる萌の家を見る。そこへ萌の父哲也も帰って来る。哲也は気はいいが不器用で収入がギリギリだった。

 

塾に戻った由宇子は、政志に詰め寄り白状させるが、対処を考えていた。正直に申し出るという政志に、ネットやマスコミの暴力で悲惨な状況になった家族を目の当たりにしてきた由宇子には、法律以上の恐怖を感じていたのだ。由宇子は知り合いの小林医師に相談し堕胎処理を依頼する。そして、萌の家に頻繁に出入りするようになった由宇子は、萌の勉強を見たり、ガス代を払ったりし、心を閉ざしていた萌は由宇子に親しみを感じ始め、哲也共々、束の間の幸せを感じる。ところが、小林に検査してもらった萌は子宮外妊娠の可能性もあり、小林は病院で処置しないと無理だと告げる。

 

観念した由宇子と政志は全てを明らかにする決断を迫られるが、由宇子が取材したドキュメントが完成し、放送まで二週間と迫っていた。ここで由宇子の周辺でスキャンダルが起こると放送が中止になる危険もあり、それは避けたかった。苦悩する由宇子は、哲也にもらった映画のチケットで萌と一緒に出かけるべく迎えにいくが、そこで、萌の家から出てきた塾の男子生徒と出会う。その彼がいうには、萌は体を売っている上に嘘つきだから信用してはいけないと言われる。一瞬で何もかも変わっていく由宇子だが、そこへ、放送局から、矢野の妻志帆が来て、放送をやめてほしいと言っていると連絡が来る。

 

由宇子が行ってみると、なんと、矢野先生は長谷部という女子高生と無理矢理関係を持った証拠の動画と、全て告白した遺書を見せる。冤罪だと思われていた事件は、実はその通りだった。由宇子は放送中止を申し出てそのまま萌の待つ車に戻る。そして萌に、塾の男子生徒から聞いたことを詰め寄る。萌は突然車から飛び出してしまう。由宇子は政志のところへ行き対処を考える。しばらくして哲也から連絡が入り、萌が事故にあったという。

 

病院へ行ってみると哲也が悲嘆に暮れていた。娘が妊娠していたこと、体を売っていたことが分かったのだ。由宇子は、意識の戻らない萌のベッドの脇に、成績が上がったらあげると約束していた萌が欲しがっていた時計を置く。しかし哲也は、自分が買ってあげるからと返す。哲也が車で送るというのを断った由宇子だが、気を取り直し戻ってきて、萌の子供の父は、政志だと告白する。逆上した哲也は由宇子の首を絞め、気を失わせてどこかへ去る。気がついた由宇子の携帯に、放送は中止が決まったと連絡が入り映画は終わる。果たして彼らは今後どうなるのか、暗い余韻が残った気がします。

 

これでもかという二重三重の層を重ねたストーリー展開とメッセージが見事で、二時間以上あるドラマに食い入ってしまいましたが、やはりちょっと暗すぎました。

 

「カラミティ」

とにかく目を見張るほどに絵が美しい。本当に美しいのでそれだけでも値打ちのあるアニメでした。ストーリーは若干荒っぽいですが、絵の色彩感覚の素晴らしさに息を呑みました。西部開拓時代に実在した女性ガンマンカラミティ・ジェーンの子供時代の物語で、評判通りの一本でした。監督はレミ・シャイエ。

 

主人公マーサとその家族が母の待つ街を目指して幌馬車隊で進んでいる場面から映画は始まる。隊を率いるリーダーアブラハムの息子イーサンとことあるごとに喧嘩をするマーサは、持ち前の勝ち気な性格から、男のズボンに履き替え、髪の毛を切って男みたいな姿になる。そんな彼女を隊のメンバーは厄介者=カラミティと呼ぶ。

 

途中大怪我をした父に代わり家族を支えるマーサだが、ある時、サムソンという騎兵隊の兵隊と知り合う。サムソンは、道を間違えているマーサらを導きしばらく旅を共にするが、ある早朝行方をくらます。しかも、隊の貴重品も消えていて、マーサにも疑いがかかる。マーサは、サムソンを泥棒と判断し、単身馬に乗り、隊を離れてサムソンを追う。途中、お調子者の青年と出会い、荒野で生きる術を学ぶと共に、金採掘をしているムスタッシュとも出会い、ようやくサムソンと出会うが、実は泥棒はイーサンで、イーサンの父アブラハムがサムソンの登場で立場が弱くなったので、出ていってもらうために貴金属を与えたことがわかる。そして、幌馬車隊は危険な川を渡る道を進んでいると警告する。

 

マーサは隊が渡ろうとしている川で彼らを救う。そして真実を知ったアブラハムらはマーサを再度迎え入れ謝罪する。こうして映画は終わっていきます。

 

とにかく、色彩が息を呑むほどに美しい。物語は雑ながらも、アニメとしては一級品だった気がします。