「THE INFORMER 三秒間の死角」
ちょっと作り込みすぎてる気がしないでもないですが、なかなか重みのあるサスペンスドラマでした。監督はアンドレア・ディ・ステファノ。
主人公ピートは、喧嘩が原因の殺人で収監されたが、FBIとの取引で、“将軍”と呼ばれる麻薬組織のボスを捉えるために、その組織に潜入する仕事を受ける代わりに仮釈放をしてもらっていた。そして、今回で最後の仕上げになる取引だったが、ニューヨーク市警が単独で行った潜入警察官が取引場所に現れ、その警官の正体がバレたために警官は殺されてしまう。
作戦が中止になり、救出されるべく行動したピートだが、FBIのウィルコックスは彼を見捨てる。一方、ニューヨーク市警のグレンズは、部下を殺されたことに絡め、ピートの周りにある闇を探るために動き始める。
ウィルコックスらFBIは、再度作戦を練り直し、ピートにもう一度刑務所に入ってもらい、刑務所内での麻薬売買のリストを洗い出した上で“将軍”を一網打尽にする計画を立てる。そして、躊躇するピートを再び収監、ピートは巧みに刑務所内でリストを手に入れるが、グレンズの執拗な捜査に困ったウィルコックスの上司モンゴメリーはピートを切り捨てるようにウィルコックスに命令する。
リストを手に入れ、そのまま独房に入って身の安全を確保する計画が、FBIの裏切りで、刑務所内で孤立したピートは自ら脱出すべく作戦を立てる。そして、職員を人質に立てこもる。一方、FBIはピートを亡き者にするべくスナイパーを送り込んでくる。また“将軍”の組織はピートの家族に迫ってくる。
間一髪でピートの家族は駆けつけたグレンズに助けられ、一方、ピートは巧みに所員と入れ替わり瀕死の重傷で運び出される。それを認めたウィルコックスは、ピートを無事逃がしてやる。
傷も癒えたピートや家族だが、組織の執拗な尾行もあり、ウィルコックスとグレンズは、ピートに一年ほど身を隠せと勧める。そして、妻と娘の顔だけ見たピートが、離れていくシーンでエンディング。
モンゴメリーらFBI上層部と刑務所内に麻薬取引のくだりが弱いために、モンゴメリーが逮捕される流れがわかりづらいのとグレンズの存在感をもう少し顕著に前に出すとメリハリがついた気もします。よく構成された脚本ですが、やや演出力の弱さが残念です。でもかなり面白かった。
「浅太郎鴉」
たわいのない股旅物で、義理と人情の世界で生きる主人公たちの何気ないドラマですが、安心してのんびり楽しむことができるのはやはりこの時代の映画ゆえでしょうか。監督は三隅研次。
国定忠治の子分の浅太郎が、義理のために一人の親分を手にかけ、そのまま旅に出て繰り広げる人情ドラマ。最後は堅気になって、幼い子供のために生きるラストは、典型的な物語ですが、チャンバラあり、恋物語ありというふんだんな見せ場の連続で、ぼんやり見ていても飽きません。
名作でもなんでもないのですが、映画を見た気になるから不思議ですね。
「怪盗と判官」
本当になんのこともない物語なのに、なぜか最後まで引き込まれて楽しんでしまう。多分、こうなって欲しいという思いがそのままストーリー展開していく心地よさがあるのではないでしょうか。これが昔の映画の娯楽性であり、職人が作るエンタメなのではないかと思います。昨今の映画は、やたら神経を逆なでしていく流れが多すぎるのではないかと改めて思います。監督は加戸敏。
主人公遠山金四郎が女遊びに興じている頃、同じく主人公の鼠小僧次郎吉が今夜も目明しに追われている。逃げて逃げてたどり着いたところは金四郎が騒いでいる広間の庭先。そこでお互い初めて目を合わすが、金四郎はひょっとこの面、次郎吉はほうっ被りをしている。その場はお互い別れたが、それぞれ訳あって旅に出ることに。そしてひょんな事から知り合うが、あの時の二人と知る由もなく、たまたま弥次郎兵衛、喜多八と間違えられたまま、東海道を京へと急ぐ。
映画は道中の二人の関わる人情話で展開、そして江戸に戻って約束の夜に日本橋で落ち合うが、一方は鼠小僧次郎吉、もう一方は北町奉行として出会う。そして、お白州で詮議をするが、偽の鼠小僧の化けの皮を剥がし、次郎吉は江戸追放、金四郎は責任を取ってまたまた旅に出ることになり、二人は再び道中へ。
取り立てて語るほどの映画ではないのに、なぜか見終わって心地よいから本当に楽しいです。