くらのすけの映画日記

「シネマラムール」の管理人くらのすけの映画鑑賞日記です。 なるべく、見た直後の印象を書き込んでいるのでネタバレがある場合があります。その点ご了解ください。

映画感想「遺体 明日への十日間」

遺体 明日への十日間

テレビカメラが入っていくことができない東日本大震災の遺体安置所をつづったルポルタージュをもとに、君塚良一が描いた人間ドラマである。映画の出来不出来というようなものを視点にする作品ではないので現実に起こった悲劇を真正面から映像としてとらえみておくべき一本と思って見に行きました。

テレビのスペシャルのようなただの軽いメッセージとして作られるのではなく、君塚良一のようなしっかりとした監督がちゃんとした俳優を使って丁寧に描くべき物語としては実に真摯に作られたまじめな映画でよかったです。

とってつけたようなキャラクターやいくら商業映画とはいえ、楽しませるという一面を描写するのではなく淡々と3月11日の悲劇から10日間に起こる裏の物語として映し出していく。

極限の状況人々が直面するのは見たこともない光景と、右往左往する心のなかのあせり。何かしなければと思いながらも体が動かない。直面した身近な悲劇に心が覆われさらに混乱する。物のように次々と運ばれる死体に自分の肉体さえも生きているように思えてこないだろう。そこに主人公相葉は「死体ではないご遺体」だと第一声を発するのである。そして、生身の人間に戻った現場の職員たちはようやく動き始める。

誰の責任でもなく誰の力も及ばない現実であるがまずは「やるべし」という言葉を合い言葉に作業をする。この現実をしっかりと記憶しておかなければいけない。そんなメッセージが画面から静かに、力強く伝わってきた気がします。涙なんか流してる暇はない。まず行動する。この映画はそのことをひたすら訴えていました。