内田けんじ監督の商業映画デビュー作。三人の男の一晩の物語が時間と空間をシャッフルされて描かれていくシュールなコメディ。とにかくおもしろい。人間の運命なんて、出会いなんて、恋なんて所詮こんなものさと笑い飛ばすブラックな一面と人間の不思議、欲望の不思議を一笑に付しながらも暖かく見つめる監督の視線が散りばめられた秀作でした。
一人の女性がドアを開けて鍵を閉めるアップから映画が始まる。鍵をポストに放り込んで家を飛び出した女性桑田真紀。婚約者に女がいることがわかり別れて一人で生きていこうと決めて飛び出したものの行く宛もなく、ひとりレストランに座っていると近くの男神田が「ご飯一緒に食べませんか?」と声をかけてくる。こうして幕を開ける一晩のめくるめく男女の物語。
神田は親友の宮田を誘ってレストランにきたのだが、なぜレストランにきたのかがどんどん明らかになる。一方の宮田はその日の昼に会社の同僚に部屋を数時間貸してくれと頼まれるという気のいい男で声をかけて一緒にご飯を食べた桑田を自分の部屋に泊めることになる。
宮田も先日婚約者あゆみに去られたところで落ち込んでいるが、このあゆみ、なぜ宮田の元を去ったかが明らかになっていく。
神田は私立探偵であゆみの本当の姿を知っている。あゆみは浅井組の組長の女で結婚詐欺をしている性悪女。浅井のところから金をもって神田のところへ転がり込む。神田は金を返して逃げろと忠告するが、さてさて神田もまたこの事件に巻き込まれ、なぜ宮田を夜中に呼びだしたかが明らかになり、さらにあゆみが持ち逃げした浅井の金が実は模造品の見せ金だったところ明らかになって、とどんどん話が膨らんで裏がさらに裏を呼ぶ展開がとにかく楽しい。
あゆみが宮田のところに隠した金を取りに来たところで桑田と出くわし、そそくさと桑田が宮田のところから帰っていくのは実はあゆみの金を見つけた桑田がねこばばして。一方浅井組の組長浅井はその場に隠れていてその成り行きも目撃していて・・・
浅井組に捕まった神田は組の事務所で浅井とあゆみに会い、組長も取られた金がにせものだとばれるわけに行かないのですなおに許して・・・
神田の冒頭のアドバイスで女の電話番号ぐらい聞けといわれてやっと桑田の去り際に聞いた電話にかけてみるも通じない朝。向かいで飯を食う神田に笑われて。・・・
桑田真紀はいったんは逃げたものの再び宮田のマンションの前でチャイムをならすが、翌朝部屋を貸す約束をしていた宮田は留守で、そこに宮田の同僚がやってきて二人でドアの前で待つショットでエンディング。
なんともおもしろい。シャッフルされた浅井、宮田、神田の話に桑田やあゆみのからみがさらにシャッフルされる様は絶品で、組長浅井の携帯の着ボイスがコミカルだったり、便利屋の山ちゃんがスパイスだったり、散りばめられるユーモアも最高。
金太郎飴のようなおもしろさでどんどん引き込まれていく最高の一品でした。いやぁたのしかった。