くらのすけの映画日記

「シネマラムール」の管理人くらのすけの映画鑑賞日記です。 なるべく、見た直後の印象を書き込んでいるのでネタバレがある場合があります。その点ご了解ください。

映画感想「孤狼の血LEVEL2」

孤狼の血 LEVEL2」

第一作はその年の自分のベストワンだった傑作の続編、監督は白石和彌。期待しすぎるほど期待していましたが、ほぼ期待通りの仕上がりで安心。これでもかというほどの残酷シーンの連続と、狂気とも思える鈴木亮平演じる上林の個性、それに対する松坂桃李扮する日岡のがっぷり四つの物語、のはずなのですが、このがっぷり四つがいまひとつ骨太さにかけたのは、原作の味を踏襲したオリジナル脚本の弱さでしょうか。さらに、中村梅雀扮する瀬島刑事に絡んだどんでん返しが、ややありきたりになって、全体が緩くなってしまった終盤は残念。それでも、二時間半ぐいぐいと迫ってくる迫力は前作同様で、前作こそ超えなかったけれど、不満な仕上がりではなかった。

 

五十子組組長の報復のために尾谷組の店に殴り込んでくる場面から映画は幕を開ける。車の運転手をしてきたのは駆け出しのチンピラ近田。ところが踏み込んで一ノ瀬を探すが待ち伏せしていた日岡ら刑事に一網打尽にされる。店を出てきた日岡は近田に刺されてしまうが、実は近田は日岡に頼まれて潜入していたスパイだった。時は平成三年、広島の呉原という架空都市、大上刑事が亡くなって3年が経ち日岡はヤクザ組織と巧みに繋がり、当時のヤクザ同士の抗争を手打ちにした。そんな頃、五十子組の幹部上林が出所してくる。

 

上林は、五十子組の親分が殺されたにも関わらず、組織同士が手打ちにしたことに不満を持つ。まず上林は刑務所で暴力を振るわれた看守の妹の家に行き、ピアノを教えているその妹の目玉をくり抜いて惨殺する。その殺人事件の捜査に駆り出されたのが、日岡で、彼を呼んだのは公安の嵯峨だった。日岡には相棒にロートルの瀬島刑事がつくが、日岡は自分を監視させるための嵯峨のスパイではないかと探りを入れる。しかし、瀬島の家で夕食を食べ、日岡の思い違いだったことを知る。一方、ピアノの教師殺害事件の捜査は一向に前に進まなかった。

 

上林は、次々と穏便に過ごす五十子組の幹部を殺していき、自ら上林組を立ち上げて真っ向から尾谷組に迫っていく。日岡は近田を上林組に潜入させ、逐一上林の動静を探らせ、尾谷組へ殴り込みの際に一斉に検挙する計画を進める。しかし、上林は近田を疑っていた。近田には姉の真緒がいて、彼女は日岡といい仲で、弟が真っ当な人間になるようにと日岡を頼っていた。

 

日岡の周りに一人のジャーナリスト高坂が彷徨き始める。日岡は次第に上林を追い詰めていくが上林は傍若無人に非道を繰り返していく。近田を信用していない上林は近田にシャブをうち、さらに日岡を殺すように命令する。近田は疑われないように日岡に銃を向けるが日岡はすんでのところで助かる。そして重傷と思わせ上林を油断させる。

 

やがて、殴り込みの情報を近田から得た瀬島は、部下を連れて尾谷組の前で張り込む。一方、日岡は単身上林を待ち伏せる。しかしそれは上林の罠だった。上林は日岡を襲い、さらに近田を惨殺してしまう。上層部から、始末書を書いた上で3年前のヤクザ組織と結託したことを文書にするように言われた日岡は瀬島に相談、瀬島は自分がなんとかするからと日岡から全てを聴取する。ところが、日を改めて瀬島の家を訪れた日岡は、瀬島の部屋がもぬけの空だと知る。全て嵯峨が仕組んだ罠だった。自分たちの弱みを握られている日岡をなき者にするため上林を泳がせ、抗争を続けさせていたのだ。

 

拘束された日岡は警察署を飛び出し車を盗んで上林たちのところへ向かう。おりしも上林は尾谷組へ殴り込みをかけていた。日岡は上林を誘い一騎打ちに出る。お互い瀕死の中、駆けつけた嵯峨らに上林は逮捕されるが、日岡は嵯峨のピストルを奪い上林を射殺する。しかし、このことは公にされることはなかった。瀬島は、真緒に突き飛ばされて交通事故で死に、日岡は全て不問にされて片田舎の駐在となっていた。森で狼が出たという住民の知らせで山狩りに参加した日岡は、絶滅したはずの日本狼を見つけ後を追う。こうして映画は幕を閉じる。

 

オリジナル作品になったが故に、前作のあの目を逸らすような残虐さだけを無理矢理踏襲して、「仁義なき戦い」路線を狙った作りは、冒頭のヤクザ同士の解説場面などのナレーションでもわかるのですが、やはり、前作は越えられなかった感じです。上林の傍若無人ぶりがいつまでも日岡や尾谷組に向かっていかないためにがっぷり四つに話が組まれない。重々しく暑苦しいこのシリーズの色が、どこかゆるくあっさり見えてしまったのが実に残念。それでも、一級品の作品には仕上がっていたと思います。