とっても色使いが美しい。物語は宣伝文句とはほとんど関係のない展開ですが、最近よくあることなのでそこは目をつぶる。映画としてはふつうの作品だったと思います。
19世紀イギリスが舞台。女性のヒステリーが一種の病気と考えられ、まだまだ細菌という意識も医学に取り入れなかった時代のいわば過渡期の物語。主人公で最新の医学の考え方を持つグランビル医師はことあるごとに昔ながらの医師と諍いを起こし、今いる救護所でも首になって、様々なところの面接の末に、ダリンブル医師という、女性のヒステリーに独特の指のマッサージで人気の診療所へ。ところが、グランビル医師の施術が話題になり、とうとう彼の右手が腱鞘炎のようになってしまう。そこで、友人で電気や電話などの当たらしもの好きのエドモンドのところで、回転する羽ほうきからバイブレーターの原理を思いつく。
とまぁ、宣伝文句を中心にあらすじをいうとこうなるが、実際はダリンブル医師の娘で、貧民街の救護所を運営する近代的な女性シャーロットとの恋物語である。さらに、妹エミリーと一度は婚約するが、シャーロットの裁判でのグランビル医師の演説に目覚め、エミリーは自立する道を進む。
いわゆる、女性が近代的な志を持ち始め、科学が近代科学へと歩み始め、その一環に、いまやややいやらしい意味にとられているアイテムのバイブレーター誕生の秘話が語られるという映画なのである。
開巻、ダリンブル医師の元を訪れている中年女性たちの顔を手際よく次々ととらえ、軽快な音楽とともにメインタイトル、そして本編へと導入部からといっても楽しい。しかし、その後のユーモアがすべて不完全燃焼で、ひとつひとつがスパイスに欠ける。イギリスの近代化の波の中の庶民のほのぼのしたお話なのか、古くさい男の考え方と新しい女の考え方の入れ替わりのおもしろさなのか、どっちつかずになっている。
結果、宣伝ではバイブレーターの発明秘話というしかなかった感じである。
平凡な映画といえば平凡であるが、画面の色がとっても上品で落ち着いているのが唯一の見所だったような気がします。見て損はないけれど、それほど優れた映画には見えなかったように思う。