くらのすけの映画日記

「シネマラムール」の管理人くらのすけの映画鑑賞日記です。 なるべく、見た直後の印象を書き込んでいるのでネタバレがある場合があります。その点ご了解ください。

映画感想「モスダイアリー」

モスダイアリー

非常に危うい、中途半端な出来映えの作品だった。

ジャンルをいえばホラーなのだろう。怪しい転校生エネッサはどこか人間離れした顔立ちだし、不可思議な行動を見せるシーンも多々あるが、一方で主人公のレベッカは、父親がカミソリで壮絶な自殺をした現場を目撃し、そのトラウマの中で非常に精神が不安定である。もしかしたら、彼女の妄想かもしれないという不可思議さもある。

どん底の中で唯一の親友ルーシーが自分から離れてエネッサと親しくなっていくにつけ、どうしようもない孤独感が生み出した異常な嫉妬と呼べるものかもしれない。つまり、この思春期の不安定な感情をメアリー・ハロン監督は描きたいのだと思うが、いかんせん、どれもこれも中途半端なのである。

映画は蛾(モス)が孵化して成虫になるシーンをゆっくりととらえながらクレジットから始まる。そして、軽いリズムでとある寄宿学校にカメラが写り、そこに思春期の女学生たち、そして、そこへ向かう車の中のレベッカをとらえる。ここまでが実にテンポ良くていいのである。

寄宿舎で親友のルーシーと再会したレベッカ、父の死を乗り越えるべく颯爽と始まる学校生活だが、いきなり、いかにもふつうではないエネッサという転校生が登場。これが何とも唐突でなんの工夫もない登場シーンがなんとも稚拙なのだ。

そして、どんどんエネッサとルーシーは親しくなり、それに対しレベッカは嫉妬を抱き、さらにエネッサの異常さに気がつくという展開なのだが、それがまたしっかりと描けていないために、なんの脈絡もなく強引に物語を突き進む。

どうやら、エネッサは吸血鬼らしい。と無理矢理思いながら、レベッカの父を尊敬するデヴィッド先生が、吸血鬼の授業をするというあざといシーンも、結局何のためか不明。先生と生徒の恋というレベッカとのシーンもどこかちぐはぐ。

ルーシーが衰弱して死んでしまう前後の、吸血鬼映画おきまりの展開もどこかすっきりしない。

ラスト、地下に何かがあると踏んだレベッカが、鍵を持ち出して入っていくとそこにエネッサを運んできたような木箱があり、中に本が。エネッサが20世紀のはじめにカミソリで自殺したことを書いた日記である。そして、確信したレベッカは、自分一人でエネッサと対決することを決意し、一人サイド地下室へ。

ふたを開けるとエネッサが眠っていて、そこに灯油をまいて焼き殺す。って、こんなにあっさりでいいの?

結局、警察の事情聴取につれていかれるレベッカのシーンでエンディング。持っていたカミソリを窓の外に捨てて、父の死のトラウマから抜けましたというエンディング。では、エネッサのことも彼女の妄想?実は彼女は精神異常で、強迫観念と妄想の中で不可思議な行動をしたのだというエンディングともとれる。しかし、どれもちゃんと描けていない。凡作でしたね。