くらのすけの映画日記

「シネマラムール」の管理人くらのすけの映画鑑賞日記です。 なるべく、見た直後の印象を書き込んでいるのでネタバレがある場合があります。その点ご了解ください。

映画感想「トリック劇場版 ラストステージ」「遥かなる勝利へ」

kurawan2014-01-20

トリック劇場版 ラストステージ」
ストーリーはかなり雑になっているとはいえ、蒔田光治の脚本と堤幸彦の演出は健在。大好きなノリとつっこみを楽しませていただきました。

例によって、例のごとくの導入部から、例によって上田教授と山田奈緒子が、今回は呪術師と対決するべく、訳の分からない島へ。

当然、レギュラーメンバー生瀬勝久扮する矢部刑事らも参入して、たわいのない展開でラストシーンへ向かう。実際、ストーリーは劇場版シリーズの中で最低のできばえで、なんの工夫もない。

とはいえ、命を懸けて、島の人々を守る山田奈緒子のクライマックスのヒロイン像から、エンドタイトルの後、実は無事だったという感じで、上田の前に現れ、初めて上田の前に現れたときの100円玉の手品をして見せてエンディング。妙に、これで終わりかと思うと寂しい中に、じんときてしまった。

まぁ、このシリーズのファンとしては、これくらい軽いタッチの方が、深夜ドラマの頃の味があって良かったかもしれない。見る人によっては、これで映画の料金取るなといいたいところだろうが、ファンとしては、大スクリーンで仲間由紀恵を見るのだから、それで十分なのである。


「遙かなる勝利へ」
この作品、第一作の「太陽に灼かれて」は見ていないし、第二部の「戦火のナージャ」もほとんど物語を忘れてしまっているのですが、めちゃくちゃ良かった。二時間半あるというのに、全く退屈しないし、その映像の迫力に圧倒されて、ラストシーンは、涙が止まらない感動に包まれる。まさに映像で語るとはこのことで、ニキータ・ミハルコフ監督の力量を目の当たりにする傑作でした。

映画が始まると、ぼうふらのアップから、それが蚊になって、飛んでいき、塹壕の兵士たちのところへと私たちを連れていく。なんともシュールはオープニングだが、その塹壕は、ロシアの兵士がたむろしている。一人の飲んだくれの上官の命令で、無謀な突撃を命令されるファーストシーンから、いかにもミハルコフ監督のふざけた風刺が効いてくる。

相手の丘の上の要塞には一人の機関銃兵士が、傍らにハツカネズミをレコードの上に載せて、ロシア兵を狙っている。一人のロシア兵が撃たれるが、たまたま蚊をたたこうとよけたために助かるという導入部のアイロニーがなんともいえない。

物語はロシアの英雄コトフと、その娘ナージャのお話だが、この第三部では二人は別れ別れになっている。前二作のシーンが所々に、挿入され、何となく、ストーリーを混乱させない演出のうまさは、全く頭が下がる。平凡なフラッシュバックではないところに、そのうまさがあるのである。

従軍看護婦が移送すると中で、ドイツの飛行機に爆撃され、荷台で出産する女性を必死で男たちが、取り出す。周りの車は全て爆撃され、死んで行くのに、最後にそのトラックだけが残るという、エピソードも秀逸。

英雄コトフが、戻ってくると、すでに妻は別の男のものになっているし、彼を避けて離れていく。その姿をただ、見送るコトフ。中佐に昇進したコトフは冒頭の塹壕の前線へと赴任し、対する要塞へ突撃するために、一般人に棍棒を持たせ、自らも棍棒を持って、平然と散歩のごとく、的に向かって歩いて行く。司令官の行動に、追随せざるをえなくなり、部下たちが、その後に続き、差r内一般人も続いて、壮大なスケールというか、画面いっぱいの人々が棍棒を持って、ドイツ要塞へ歩いて行く。

あっけに取られ、攻撃も出来ないドイツ兵。冒頭で登場した機関銃兵士が狙っている。ロシア側に、木の上にスナイパーのような男がひとりいる。機関銃兵士が、スコープの前にぶら下がったクモを取り払おうと、身を乗り出したとたん、スナイパーに撃たれ、めがねがテーブルの上に。オイルもこぼれる。太陽が照ってきて、めがねのレンズでしだいに紙が燃え始め、流れるオイルに燃え移る。一方要塞の中のほかのドイツ兵は、向かってくるロシア兵に攻撃するべく武器を装填。ところが、機関銃兵のところで火災から大爆発。その引火で洋裁が爆発。訳もわからずコトフ大佐らは勝利するその爆音で、近くで従軍看護婦たちがいて、そこにナージャがいた。そして爆発のほうを見ると、父コトフの姿。思わず駆け下りるが、そこは地雷がしいてある。

コトフもナージャに気がつき、二人が今にも抱き合う寸前、ナージャが地雷をふんでしまう。動けなくなったナージャに近寄り、ナージャの靴の上から地雷を踏み、抱き合うコトフ。そして、ナージャにブーツを脱がせ、きた道を離れるように言う。1,2,3・・・コトフの言葉が響き、10、あでいって、空を仰ぐコトフ、暗転爆発音。素晴らしいラストシーンである。

会話している男たちの間に喋々が舞ってみたり、映像へのこだわり演出は、まさにニキータ・ミハルコフ監督の真骨頂。かつてコトフを陥れたドミートリが、わざと捕まり、スパイであるという書類にサインする終盤の展開も涙を誘う。

三部作をもう一度見ればさらに感動が倍になるのではないかというほどの、見事な一本でした。