くらのすけの映画日記

「シネマラムール」の管理人くらのすけの映画鑑賞日記です。 なるべく、見た直後の印象を書き込んでいるのでネタバレがある場合があります。その点ご了解ください。

映画感想「エヴァの告白」「次郎物語」(清水宏監督版)

エヴァの告白

エヴァの告白」
大好きなマリオン・コテイヤール主演というのが頼りの一本でしたが、なんとも堂々巡りの物語にぐったりしてしまいました。導入部からストーリーが外へ発展していかないために、進むかと思えば、引き戻され、結局、最初に戻るというような脚本の組立が非常にしんどい。

内容が、1921年のポーランドかrアメリカに夢を求めてやってきた主人公の、苦難の物語だけに、重いし、色彩も、かなり押さえたカラーを中心にしていて、美しさもない。クローズアップを多用した迫ってくる映像もしんどい。いくら、マリオン・コテイヤールが演技力があり、ストーリーを引っ張っていけたとしても、そこまでいかない。

画面は、1921年の霧に煙る自由の女神から始まる。ようやくアメリカまでたどり着いたポーランドからの移民エヴァと妹のマグダ。しかし、肺病のマグダは移民局で隔離され、エヴァも船内での行動から、送還寸前になる。しかし、ここに、ブルーノというコネのある興業師に助けられ、ニューヨークに降り立つ。そこで、無理矢理踊り子にさせられ、売春をさせられるも必死でいきようとする、展開かと思いきや、妙にこのエヴァが、落ちていくことに抵抗するし、ブルーノのいとこで、気のいいオーランドに牽かれるも、ブルーノにじゃまされ、頼りにしていた叔母に、一端は見放されるが、またブルーノに助けられ、でも、オーランドを事故で殺してしまったブルーノから離れるため、叔母に再度お金を工面してもらい、マグダを助けにいくため、ブルーノのコネを使い、エヴァは、ブルーノを残して、マグダを助け出してエンディング。

とまぁ、物語は、結局最初に戻ってしまう。いったい何だったのかという展開で、明らかに脚本の弱さにある。いや、映画になっていないのである。

監督はジェームズ・グレイ。さすがに、しんどかった。


次郎物語」(清水宏監督版)
これは、本当にすばらしい名作でした。とにかく、カメラが抜群に美しい。田舎の旧家をゆっくりと横に移動させながら撮るカメラワーク、外の景色の中に配置する人物を、ゆっくりと追いながら移動するアングル、どれをとっても、名品に近い。こういう、カメラの美しい映画を見ると、本当に、映画というのはすばらしい芸術だと思います。

物語は、下村湖人の名作の映画化である。少年時代に乳母に育てられた次郎が、本家の本田の家に再度引き取られるところから物語は始まる。そして、やがて、乳母への思いも断ち切れ、実母との暖かい生活もつかの間、やがて、かつての士族であった本田家は、祖父が亡くなり、町へでて酒屋をすることになる。そして、再び、今度は母の実家に引き取られる次郎、やがて、母の死、そして、本田家にもどり、中学に進み、新しい母をいつまでも「お母さん」と呼べないのだが、修学旅行から帰ってきて、ようやく「お母さん」と呼べるようになるクライマックスまでが描かれる。

何度も書くが、とにかく、カメラがため息がでるほどに美しい動きと構図を見せるのである。清水宏のある意味、完成した一本なのだろうと思う。ストーリー展開も、それぞれの人物の情感が見事に描けているし、小学校から中学まで同じ男の子が演じるのは、かなり無理があるように思えるが、それでも、様々な境遇の変化に、変わっていく、心の変化も手に取るように描写されている。これが名品、名作というものなのだろう。本当に、いいものを見ることができました。