くらのすけの映画日記

「シネマラムール」の管理人くらのすけの映画鑑賞日記です。 なるべく、見た直後の印象を書き込んでいるのでネタバレがある場合があります。その点ご了解ください。

映画感想「白ゆき姫殺人事件」「チーム・バチスタFINAL ケルベ

白ゆき姫殺人事件

「白ゆき姫殺人事件」
大好きな中村義洋監督作品でもあり、宣伝からかなり期待の一本をみる。

井上真央は、以前はあまり好きではなかったが、正直、この作品では女優賞レベルの演技力に脱帽、すばらしかった。いや魅力的だったというべきだと思います。さらに、これも嫌いな貫地谷しほりも、その存在感に見入ってしまった。その上、大好きな蓮沸美沙子が、冒頭で、しっかり、私をつかんでしまったから、完全に犯人が分からなくなってしまいました。ネットの感想では、すぐに犯人がわかると書かれていたが、完全に翻弄。なさけない。

さて、映画ですが、期待以上の出来映えとはいえませんが、なかなかおもしろかった。テンポが淡々として、途中一本調子に陥るあたりが、やや不満ですが、後半から終盤、ネタが明らかになり、畳みかけるフラッシュバックで、真相が城野美姫によって語られる下りは、おきまりとはいえ、このリズム感はうまい。ただ、中盤の間延びはおそらく湊かなえの原作の弱点かもしれない。

映画は、一人の美人OL三木典子が胸を滅多突きにされて殺されている姿を真上からとらえるカットに始まる。まるでブラウスの赤い模様のように見える鮮血の跡、このカットがこの後二回出てくるが、そのたびにこの鮮血が体いっぱいに広がっているのに気がつく。

タイトルの後、しがない契約社員の赤星がツィッターにラーメンの記事をつぶやいている。そこに殺人事件がかぶり、さらに赤星の元カノ狩野里沙子から連絡が入り、殺されたのは会社の同僚だとかたり、そこで、その取材を勝手に始めた赤星のつぶやきがどんどんエスカレートしていく。

前半は、犯人にされた城野美姫が、どんどん、バラエティ番組のネタにされていく下りが描かれるが、ツィッターなどのテロップが、ややうるさくなってくるあたりから、ストーリーは転換し始め、行方不明の城野美姫がビジネスホテルで涙ぐんでいる場面から、真相を語るラストシーンへ流れる下りは秀逸。

赤星が、前半から中盤に取材する人々が語る城野美姫の姿が、おもしろおかしく増幅する場面が、もう少し抑揚があってもよかった気がするし、終盤で、三木典子の正体が明かされ、その人間性の描写ももっと極端であってもおもしろかった気がするが、全体に人物描写が平坦すぎて、それぞれが、演技者の個性に頼った部分がちょっと物足りない。

ひきこもりで、城野美姫の幼なじみの夕子の「赤毛のアン」のエピソードは、ラストで、胸が熱くなった。

とはいえ、ネットの無責任な投稿がどんどん架空の人物を作り上げていく下りは、今更陳腐な展開かもしれないが、ミステリーサスペンスに取り上げた原作の味はしっかりとでている。

結局、犯人の里沙子があっけらかんとその動機を語り、警察をあきれされる下りが、もっとショッキングならおもしろかったが、それも、あまりにさりげなさすぎるというのは、時代がそうさせたものか演出の弱さか、でも蓮沸美沙子のひょうひょうとした目つきがいいですね。

エピローグ、城野美姫の自宅に謝罪に行った赤星が、帰り、城野美姫の車にひかれそうになり、降りてきた城野美姫が、赤星に、ほほえみともつかない笑みをみせるラストは、「告白」に共通するかもしれない。ただ、実は・・・という暗示が見えてもおもしろかった気がするが、それはさておき、もう一度みたくなるような映画でした。


チーム・バチスタFINAL ケルベロスの肖像」
映画としての感想をまず書くと、全く、最低の映画だった。テレビシリーズのキャストを全部出して、エキストラを増やせば映画だと思っている製作陣を軽蔑する。しかも、脚本さえも陳腐そのもので、原作があるとはいえ、当初の映画シリーズのそれに比べると、月とすっぽん、観客をバカにしているとしかいえない。

画面づくりも、隙間だらけで、家庭のせいぜい40インチくらいなら耐えられるが、大スクリーンでは、耐えられない画面づくりにも辟易した。

その上、テレビドラマでしか通用しない演技力で迫ってくれば、もう、二時間半がしんどいだけだった。

本筋の、リバイアサンという巨大AIシステムの登場に始まり、これを機軸に、サスペンスが展開すると思いきや、先日放映されたテレビシリーズの人物が現れ、白鳥の過去を暴く。一方で、薬害被害にあった母親の敵とばかりにコンピューターウィルスをばらまく犯人のリアリティのなさ。

テレビスペシャルでも通用しないような出来映えに、開いた口がふさがらない映画でした。いや、映画とはいえないものでした。最低!!!