くらのすけの映画日記

「シネマラムール」の管理人くらのすけの映画鑑賞日記です。 なるべく、見た直後の印象を書き込んでいるのでネタバレがある場合があります。その点ご了解ください。

映画感想「銀(しろがね)心中」

kurawan2014-08-05

新藤兼人脚本、監督作品、であるが、どうも物語のシーンの繰り返しが、ちょっとくどいために、後半部分までもたない。その分、しんどくなってくる一本でした。

開巻早々、吹雪の中、主人公佐喜枝がふらふらと歩いてくる。カメラは極端な斜めの構図、続いて、彼女がとある旅館の二階へ、カメラは右の斜め左の斜めの構図を繰り返す。佐喜枝が部屋に突っ伏して泣きぬれる。一人の着物が乱れた女がそれを見つめる。

強烈な冒頭シーンから、物語は、とある床屋の店先、佐喜枝と夫の喜一が営む平凡な店に、いとこの珠太郎が修行にやってきて、ストーリーの本編。やがて、喜一が出征し、まもなく、珠太郎も出征、入れ替わり喜一の戦死の報がはいり、空襲で店が焼けて戦後。

佐喜枝は、戦地から戻ってきた珠太郎と懇ろになり、穏やかな生活が始まったかと思ったところへ、戦死したはずの喜一が戻ってくる。

ここまでが実に前半の短い部分で語られ、ここから後は、珠太郎と離れられない佐喜枝の、執拗に珠太郎を追いかける恋物語の展開。そんな佐喜枝から逃げる珠太郎の物語が、逃げては追いかけ、再会しては行方をくらましが何度も繰り返されるのだ。

この繰り返しがしつこく、次第に、しんどくなってくる。そして盛岡の銀温泉に逃げた珠太郎を追い、佐喜枝はとうとうここで二人で心中をしてしまう。

物語の本編へ入るまでと、その後のバランスがちょっと、偏りすぎで、冒頭の奇抜なカメラアングルで、その差を埋め、後半の美しい正当なカメラワークで語っていくという意図は分かるが、ちょっと、無理がある気がした。

昨日みた「愛妻物語」から、少したった新藤監督の作品だが、その辺かがかいま見られる一本でした。