くらのすけの映画日記

「シネマラムール」の管理人くらのすけの映画鑑賞日記です。 なるべく、見た直後の印象を書き込んでいるのでネタバレがある場合があります。その点ご了解ください。

映画感想「マザーMOTHER」「悪童日記」

kurawan2014-10-07

「マザー MOTHER」
謀図かずおが監督をしたいわば自伝的な映画であるが、そこはやはり謀図かずお、ホラー味満点である。しかしながら、前半はかなり間延びする。テンポが悪いという感じだが、終盤になり、取材のために女性が五条へ取材に行き、家で少女に振り返られて、追いかけられてから、俄然謀図かずおの世界になる。

正直わけがわからない唐突な展開だが、そんなツッコミをさて置けば、とにかくそのままラストシーンまで駆け抜ける。

物語は、謀図かずおのお母さんが死ぬところから始まり、謀図かずおを取材に来た女性が、取材を続けるうちに、なぜか恨みのある母親が生き返り、復讐を始める。

結局、ある程度復讐して、あの世へ再び旅立つ。冒頭の、握りしめた髪の毛の謎も明らかになり、どこか感動的な幕切れになる。

もっともっと、謀図かずおの作品へのオマージュが、あちこちにあってもいい気がするが、本人が原案脚本なのだから、そこはほどほどでいいのかもしれない。

映画としては中の下の出来栄えで、素人と玄人の監督の違いというのがはっきり見えてしまった完成度である。面白くないわけではないが、大画面で見るほどかというレベルと、ライティングが悪くて、無意味に逆光が目立つのが気になってしまった。


悪童日記
重いし、相当シリアスな作品だった。さすが、ドイツハンガリー映画である。
例によって、ナチスユダヤ人迫害のエピソードは見え隠れするが、物語の中心は、そんな背景で必死で生きる双子の物語である。

主人公になる双子は最後まで、その名前は明らかにならない。預けられる祖母も地元では魔女と呼ばれていて、最後までそのままであり、双子の母親もメス犬としか呼ばれない。徹底した非人間化した描き方である。

物語は、父親がやがて戦場へ行かなければならなくなり、双子は目立つからと、母親の実家に疎開させられるところから始まる。主人公になる双子は、地元では魔女と呼ばれ疎まれている祖母の家に預けられるが、祖母は二人を人間らしく扱わず、メス犬の子供と呼び捨ててこき使う。なぜそういう扱いをするのかなどの背景は全て削除している。父からの指示で、ノートをつけることを続ける二人の行動が、物語を牽引していく。

二人は、苦痛に耐えるために、お互いに殴り合って鍛えたり、空腹に耐えるために、絶食をして精神力を鍛えたりする。その行動が、祖母には不気味に見え、何気なく、微妙に心が繋がっている雰囲気がスクリーンから臭い始める。

二人は、司祭を脅して金をもらい、ユダヤ人の靴屋に行って、したしくなる。しかし、一方で、教会に勤め、心の美しいはずの女性が、平気でユダヤ人を罵倒するのを見て、彼女のストーブに爆弾を仕込んで懲らしめたりする。

離れに駐留しているドイツ人将校に助けられたり、次第に大人の本質を見極めていく双子の視線が非常に鋭い。
やがて、戦争が終わり、母親がくるが、別の男の赤ん坊を抱いている。一緒に行こうという母の申し込みに押し問答をしていて、母は爆弾で爆死。その後、父が収容所から帰ってきたが、二人は国境を越えるという父についていかない。いや、国境には地雷があり、先に誰かが、踏まないと、越えられないことを知っていて、二人は父に先にいかせたのだとわかるのだ。

そして、祖母も死に、最後の試練として、二人は別れていく。国境の向こうに去る1人を見送るもう一人のシーンで暗転。

ありきたりの反戦映画ではなく、あくまで、そういう時代に必死で生き抜いた双子の人間ドラマに見える。ドイツ将校も非道を働くわけではなく、ユダヤ人の靴屋もいい人物として描いている。教会関係者は悪人のように描写している。

映像はほぼ、シンメトリーな構図を多用し、辛辣な視点で描く人間ドラマという感じの一本でした。見応えのある作品だったと思います。