くらのすけの映画日記

「シネマラムール」の管理人くらのすけの映画鑑賞日記です。 なるべく、見た直後の印象を書き込んでいるのでネタバレがある場合があります。その点ご了解ください。

映画感想「0.5ミリ」

kurawan2014-12-02

3時間を超える長尺映画である。監督は安藤桃子、主演は安藤サクラ、プロデューサーは奥田瑛二、とファミリーがそろった映画だ。

と、そう書くと、ただの話題映画かと思われがちだが、なかなかいい映画でした。特に前半三分の二あたりまではすばらしい。心がどんどん暖かくなるのがわかるのです。老人介護の物語ですが、ほほえましいほどに、人間の心の本質に入り込んでいくストーリー展開がすばらしい。

映画は、主人公サワが片岡家の老人を介護しているシーンから始まります。夫がでていってしまったその家の息子の妻雪子から、おじいちゃんと一晩だけ寝てやってほしいと頼まれ、一夜おじいちゃんと布団をともにするサワ。しかし、つい拒否したために、傍らのストーブの火がおじいちゃんに燃え移り、助けだそうと引きずったために、息を引き取る。あわてて階下に降りると、介護に疲れた雪子が首をつっていて、そばに口をきかない子供マコトが呆然とたっている。

職も金も失い呆然としていたサワは、カラオケ店で一晩泊まろうとした老人康夫にくっついて、カラオケでオールをし、その老人に感謝されて朝を迎える。続いて、一人自転車をパンクさせたりしている老人茂を見つけて、押し掛けて、茂の家で泊まり始める。

この小気味よいほどの力強い生活力と、コミカルな展開が実に楽しいし、でてくる老人、特に最初の井上竜夫坂田利夫の吉本芸人が抜群にいいのです。今まで吉本の芸人を使ってここまで生かしきった映画はないなと感動してしまう。それに、それぞれのエピソードも、自然と胸が熱くなる。

坂田利夫扮する茂に、最後に感謝されて秘蔵の117クーペとなけなしの1000万をもらい、サワは次のターゲットを探しに行く。そして出会ったのが津川雅彦扮する義男である。

体よく、家に入り込み、押し掛けヘルパーとなる。そこには寝たきりの妻静江がいる。

このエピソードもとにかくほほえましいのだが、最後に、とうとう義男もぼけてしまい、戦争にいった頃のことを延々と演説する終盤が、ちょっとくどい。このあたり奥田瑛二の色ではないかと思ってしまう。

ここをでたサワは、片岡家のマコトと偶然再会し、彼が一緒に住む父のところへ転がりすむ。このあたりからのエピソードが、前半のテンポとがらりと変わる感じがして、どうもいけない。ここまで長尺の作品にしなければ、この終盤はカットするところだろう。

結局、父親をのこし、マコトとサワは車に乗って走り去ってエンディング。

全体に非常にいい映画だが、いかんせん、終盤の弱さがどうも残念で仕方のない映画だった。