くらのすけの映画日記

「シネマラムール」の管理人くらのすけの映画鑑賞日記です。 なるべく、見た直後の印象を書き込んでいるのでネタバレがある場合があります。その点ご了解ください。

映画感想「ガガーリン 世界を変えた108分」「ジミーとジョルジュ

kurawan2015-01-22

ガガーリン 世界を変えた108分」
最初に、こういう偉大な歴史の一ページを丁寧に、まじめに作った作品は、ちゃんとシネコンで拡大公開すべきだと思う。特に、ほとんどが、アメリカや西側諸国からの視点で絵がれることの多い中では、こういうロシアの側からの視点で作られた物は、大きな画面で見せるべきだと思う。

まず、宇宙のシーンがとにかく美しい。もちろん、今の特撮技術ならこれは普通かもしれないが、これを大画面で見せられないのがとにかく残念だった。作品自体は、良質の佳作だと思います。いい映画だった。

物語は1961年4月、今から人間を乗せた人類最初のロケットが打ち上げられようとするところから始まる。選ばれた飛行士はガガーリン中尉、のちに飛行が成功して、異例の二階級特進で少佐になる。

映画は、ガガーリンを乗せたボストークロケットが打ち上げられるところから、地球を周回し、地上に無事帰ってくるまでの映像に、ガガーリンの少年時代から、訓練までを交互に挿入しながら展開していく。

飛行士として選ばれる下りや訓練の様子を、実に丁寧に描く一方で、設計主任などのスタッフ側の揺れる苦悩と不安を描く。

なんといっても、飛行が成功し、村人に祝福されたときに父親のクローズアップがすばらしいし、おもわず抱き合ってしまうスタッフの感動がこちらに伝わってくる。そしてもちろん、ガガーリン本人の晴れやかな笑顔も、何ともいえない感動を呼んでくれるが、その後エンドクレジットで、世界初という偉業による重圧と政府の画策から、二度と宇宙へいくこともなく、試験飛行の訓練で事故死ししたというテロップが流れると、これが歴史なのだと痛感してしまうのだ。

決して、ただの英雄として、そして、当時の大国ソ連の偉業として、大々的な描写をするのではなく、ガガーリン本人、その周辺の人々、計画への情熱、ガガーリンの両親や妻の素直な思いにも丁寧にカメラを向けた演出が見事なのである。

いい映画に出会ったという充実感に浸れる作品でした。


「ジミーとジョルジュ心の欠片を探して」
しんどい。とにかくしんどい映画だった。フランスの名匠アルノー・デプレシャン監督の作品だが、淡々と進む抑揚のない繰り返しが、だんだんと苦痛にさえなってくる。しかも、主人公であるジミーとジョルジュの心の交流が、ひたすら沈んだ表現で演出されるので、みている私たちも、沈んでいくのだ。

映画は、1948年、戦争から帰ってきたジミーは、時々めまいや頭痛をし、動けなくなる症状に悩んでいた。ネイティブインディアン出身の彼は、姉に促されるままにカンザス州の病院へ入るが、原因が分からない。そこで、精神分析医のジョルジュが呼ばれる。

こうして、ジョルジュがジミーとの心の交流の中で、次第に、本当の原因に迫っていくヒューマンドラマが物語の中心になる。

時折、ジミーがみる夢の映像が、シュールで、ここに映像表現のポイントを置いているのだろうが、全体が地味なために、スパイスにならない。

確かにマチュー・アマルリック扮するジョルジュとベニチオ・デル・トロ扮するジミーの対照的なキャラクターは映画的だが、周辺の女性たちの存在が妙に不確かなのである。

結局、本当の原因がわかって、解決し、二人とも未来が見えてきて、男の友情の別れになるラストなのだが、どこかすっきりしないのである。

凡作ではないとおもうが、これはさすがに退屈という言葉が当てはまってしまった。