「フェデリコという不思議な存在」
本来ドキュメンタリーは見ないのですが、フェリーニのドキュメントとなればやはり見ないわけにいかないし、ほかに見る映画も少ない週なので見に行った。
ドキュメンタリーですが、フェリーニの若い頃は俳優が演じている。さらに、そこかしこに演出された場面が出てくるので、ある意味ドラマといっても十分に認められる作品で、しかも、フェリーニ作品のファンタジックな映像もたくさん挿入されるので、楽しかった。
映画は、海岸で夕日を見つめるフェリーニの後ろ姿から始まります。彼の作品へのオマージュ的な場面がスポットライトの中に語られて、映画は本編へ。
フェリーニが風刺雑誌の編集部で漫画を描き始めた頃に始まる。この映画の監督はここで机を並べたこともあるエットレ・スコーラである。
過去の作品を挿入しながら、フェリーニの映画よろしくファンタジックな映像でモノクロからカラーさらにモノクロに変化させる演出でどんどん巨匠フェリーニの姿を描いていきます。
ドキュメンタリー映像とはちょっと色合いの違う作品で、その意味では、なかなかの逸品です。
ラストは、フェリーニの葬儀シーン、そして、フェリーニらしい人物が、その場から逃げ出して、それを守衛兵が追いかけていくシーンからファーストシーンの海岸の場面になってエンディング。
全体に夢見るような幻想的な作品なので、ものすごく、フェリーニの映画が観たくなりました。
「at Homeアットホーム」
あまり期待せずに見たのですが、以外と普通に面白かった。損をした気分にならなかったのは良かったです。監督は蝶野博です。
映画はモノクローム、主人公の男性が浴室のドアを開けるとそこに鎖でつながれた少年を見つける場面から始まる。続いて、いかにもほのぼのした家族のシーン。少年と姉、兄、綺麗な母、そこへさっきの男性がスーツ姿で帰ってくる。普通の仕事帰りのような風景だが、何かおかしい。男性は今日の成果だと誰かの財布を取り出し、掛け軸も盗んだと言って家族に責められる。それも、普通に明るく責められるのだ。
どうやら、この男は泥棒をして生計を立てているようで、さらに母も結婚詐欺師、長男は偽造印刷を行う会社にいるようだ。
そして、映画は、妻である女性が詐欺に失敗し拉致され、金を要求される展開になり、なんとか金を印刷して持参し、そこへ、次男がピストルで犯人を打つ瞬間からフラッシュバック、それぞれがどういう経緯で家族として生活を始めたかが語られる。
それにかぶって次男が学校で家族のことを作文にして発表しているシーンと交錯する。
親に虐待されていた次男、夫の暴力に苦しんでいた妻、父の暴行を受けていた長女、両親に邪魔者扱いされていた長男、それぞれが何かの偶然で出会い、一緒に暮らすようになる。
サスペンスとかミステリーではないので、描かれるのは家族の絆、人と人のつながりである。したがって、犯罪場面はかなり稚拙である。しかし、それぞれが肩寄せ合って本当の心の絆で生活する姿は単純に涙を誘う。
結局、犯人の男を撃ち殺してしまい、次男をかばうために父が正当防衛したように長男と図る。そして、何年か経って出所してきた父を出迎える家族のシーンでエンディング。胸が熱い。
題材が面白いので、傑作にもなりえた一本で、正当に演出した真面目な作品ゆえに、ちょっと奇抜さは薄いが、それなりにいいお話だった、面白かったなと思える映画でした。