くらのすけの映画日記

「シネマラムール」の管理人くらのすけの映画鑑賞日記です。 なるべく、見た直後の印象を書き込んでいるのでネタバレがある場合があります。その点ご了解ください。

映画感想「燃ゆる女の肖像」「魔女がいっぱい」

「燃ゆる女の肖像」

色調を抑えた絵作りと、細かいセリフに散りばめられた伏線、そしてなんとも言えない色気とエロティックさを漂わせる展開が見事な作品でしたが、地味で淡々と流れる物語は、悪く言えばしんどいです。でもなかなかの一本でした。監督はセリーヌ・シアマ。

 

美術を教えているマリアンヌは、自分をモデルに生徒にデッサンさせていたが、生徒達の背後にマリアンヌの絵が飾られているのに気が付き、生徒がその題名を尋ねると「燃ゆる女の肖像」だと答えて映画は始まる。

 

ある小島に向かう小船に乗るマリアンヌ。キャンバスを海に落とすが飛び込んで拾う。彼女は結婚を控えたエロイーズという女性の肖像を描くために島にやってきた。出迎えたのはソフィというメイドで、エロイーズの母が言うには以前きた画家は帰ってしまったと言う。部屋には顔を消した肖像画が残っていた。全裸で服を乾かしながら暖炉の前でパイプを燻らすマリアンヌのファーストシーンがうつくしい。

 

マリアンヌはエロイーズの散歩の友達ということで彼女を観察し極秘に絵を仕上げていく。しかし、完成した絵をエロイーズに見せると、これは自分ではないと否定、マリアンヌはその絵を潰してしまう。そしてエロイーズの母の申し出で五日後に戻るまでに完成するよう言い残す。

 

エロイーズは正式にモデルになることを申し出、マリアンヌが再度絵を描き始めるが、見つめ合ううちに二人の間には恋が芽生えてくる。屋敷でエロイーズ、マリアンヌ、ソフィの三人の生活が続く。マリアンヌがエロイーズの申し出で本を一冊貸す。それは「オルフェ」で、決して振り返ってはいけないと言う忠告を破り妻を振り返ったために妻は奈落に落ち永遠の別れが来るというラストを語るが、このエピソードが終盤何度も出てくる。

 

やがて、マリアンヌとエロイーズはキスを交わす。一方ソフィは妊娠していることがわかり、マリアンヌやエロイーズの協力で堕ろそうとするがうまくいかず、堕胎手術をする女性の元を訪れる。赤ん坊が横で寝ているベッドの脇で手術をする場面はある意味相当斬新。

 

まもなくして村の祭りがあり、エロイーズとマリアンヌは出かける。火を焚いているところを挟んで見つめ合う二人。エロイーズのスカートに火が燃え移り、すぐに消されるものの、この場面が冒頭の絵になる。

 

二人は体を合わせる。間も無くしてマリアンヌが去る日も近づくが、マリアンヌはエロイーズの裸体に自分の顔を重ね、自分の裸体画を貸した本の28ページに描く。やがて、絵が完成し、エロイーズの母が戻ってくる。そして梱包された絵が持ち帰られ、マリアンヌの去り際、ウエディングドレスに身を包んだエロイーズがマリアンヌを送り出す。出口で振り返るマリアンヌ。永遠の別れとなる二人のシーンはまさにオルフェだった。

 

そして、何年か経ち、マリアンヌはとある絵のオークション会場で、子供と一緒に描かれたマリアンヌの絵を見つける。そに絵には28ページを指で挟むエロイーズが映っている。それが彼女との再会だった。そしてその後、オーケストラ演奏を聴きに行ったマリアンヌは向かいの桟敷席で舞台を見つめるエロイーズを見つける。エロイーズは決してマリアンヌを見ることはなくじっと舞台に見入っているが、いつの間にか涙が溢れていた。かつて、エロイーズはマリアンヌにオーケストラは見たことがないと言ったのだ。こうして映画は終わる。

 

セリフの一つ一つ全てが伏線として物語を牽引し、オルフェの物語に重ねた映像演出も素晴らしく、淡々と語られる中に描かれる叶わないラブストーリーがとっても美しい。若干展開はしんどいが、なかなかの映画でした。

 

「魔女がいっぱい」

なんとも安っぽい普通のファンタジー、監督がロバート・ゼメギスでなかったら見るところもないという映画だった。

 

一人の少年ぼくのセリフから映画が始まる。8歳の時に交通事故で両親を亡くし、祖母のもとで育てられることになる。祖母はぼくが寂しくならないように二十日ネズミを買ってくる。ぼくはデイジーと名付けて可愛がる。

 

ある時、スーパーでぼくが魔女にあったので、祖母が不安になり知人のホテルに引っ越すことのする。そこでぼくは大魔女が魔女軍団を連れて集会している現場にでくわす。たまたまホテルで知り合ったブルーノもネズミに変えられてしまい、デイジーも実は人間だったこともわかり、ぼくも大魔女にネズミに変えられたので、大魔女の陰謀を阻止するべく祖母と立ち向かう。

 

あとはドタバタ劇で、結局、ぼくらも人間には戻れないままで、ただ大魔女はやっつけ、世界中の魔女をネズミに変える活動を始めて映画は終わる。なんの見せ場もない一本で、こんな普通の映画が公開される今が寂しい限りの映画でした。