くらのすけの映画日記

「シネマラムール」の管理人くらのすけの映画鑑賞日記です。 なるべく、見た直後の印象を書き込んでいるのでネタバレがある場合があります。その点ご了解ください。

映画感想「おとうと」

kurawan2016-02-25

「おとうと」
ほぼ30年ぶりくらいで見直した。銀残しという現像法で有名な市川崑監督の傑作。今回はデジタル復元版である。

本当に久しぶりでしたが、あちこちの名シーンは覚えていました。いやそれより、こんなに素晴らしい映画だったのかと改めて驚いてしまった。

もちろん、渋みのある独特のカラー映像の素晴らしさはもちろんですが、ピシッと決まった構図の美しさ、光と影を効果的に作った映像など、どこを取り上げても素晴らしいし、なんといっても、男勝りで、啖呵を切る岸恵子が惚れ惚れするほどかっこいいのだ。

雨の中、おとうとに傘を届けようと走る岸恵子、こうもり傘の中、向こうにずぶ濡れの川口浩というオープニングから、差し込む光で陰影を作る自宅内のシーン、田中絹代の顔を照らす明かりなど、ため息が出てしまいます。

若さゆえに無茶を繰り返すおとうとに、献身的に面倒を見る姉、子供達に無頓着な父、リュウマチという負い目からややひがんだ姿の母、それぞれの人物の色分けも見事で、たわいのない話なのに、画面に釘付けになります。

クライマックス、結核で死んでいくおとうとを看病する姉の姿、弟の死でその場で気を失った姉は、病院の宿直室に運ばれるが、気がつくと、条件反射のようにエプロンをして飛び出していくエンディング。全く、名作とはこのことである。本当に素晴らしい作品を見直すことが出来ました。