くらのすけの映画日記

「シネマラムール」の管理人くらのすけの映画鑑賞日記です。 なるべく、見た直後の印象を書き込んでいるのでネタバレがある場合があります。その点ご了解ください。

映画感想「アイヒマン・ショー 歴史を映した男たち」「COP CAR コッ

kurawan2016-04-26

アイヒマン・ショー 歴史を映した男たち」
これは見事な映画でした。卓越した編集テクニックと、映像と音をオーバーラップさせたハイテンポな演出が見事な一本、映画というものを堪能させてくれる傑作だったと思います。監督はポール・アンドリュー・ウィリアムズです。

ナチス親衛隊長アドルフ・アイヒマンが逮捕され、その裁判がユダヤ人の故郷イスラエルで開かれることになる。テレビプロデユーサーミルトン・フルックマンとドキュメンタリー監督レオ・フルビッツは、この世紀の裁判を映像にして世界に届けるという計画を立てる。

いかにして判事を納得させるかという冒頭の緊迫感溢れるカットの切り返しが実に見事で、一気に物語の中に引き込んでくれる。

裁判所の壁にカメラを埋め込み、裁判の様子をとらえ始める中盤から後半、常にアイヒマンに視線を向けようとするレオは証言する人々の姿を描いていこうとするミルトンと対立始めるが、逆に言うとこの世紀の出来事をいかにリアルに世界に知らしめるのかという彼らの意気込みを見せてくれる。

次々と行われる証言に身じろぎもしないアイヒマンのアップ、モノクロとカラーを交互で繰り返し、実写映像なのか今回作られたものなのかもわからないカット編集で、見事な緊張感を生み出していく様は、圧倒されます。

脅迫の手紙が届き、手榴弾を持った男が目の前まで現れたり、次々とギリギリの緊迫感を見せるエピソードも挿入され、さらに、同時期に世界で起こったキューバ危機やガガリーンの地球一周の出来事で人々の気持ちが揺れる姿も実にうまく挿入されている。

そして、裁判=映画はクライマックスを迎える。

最後の最後で、ついにアイヒマンの表情が崩れ、勝利を確信するレオたちの姿は見事である。

エピローグは、実話であることで実在のレオとミルトンの姿が描かれる。
確かに、証言映像で見せるナチスの虐待映像は目を覆うばかりであり、それを指揮したアイヒマンの存在は、非道のものに思われるが、果たして、戦争がなかったら彼はどうなっていたか、それも考えて欲しいと思う映画でした。


「COP CARコップ・カー」
面白かったかと言われれば、疑問になるし、じゃあ面白くなかったかと言われれば、そこまで言えないという感じの映画。中途半端なのだが、アイデアは面白い、そんな一本でした。監督はジョン・ワッツです。

二人の少年が、スラングを繰り返しながら草原を歩いている。どうやら家出してきたようだ。ふと、木陰にパトカーを見つける。最初は恐る恐る近づいていたが、誰もいないことがわかり、乗り込み、さらに動かしてしまう。

カットが変わるとパトカーが木陰に入ってくる。中から降りてきた警官がトランクの死体を運び出し、離れたところの井戸のようなところへ放り込む。トランクにはもう一体人間が乗っていたようだ。警官が戻ると、パトカーがない。つまりさっき少年が乗っていたパトカーだ。警官も只者ではない。こうして物語が幕をあける。

無線を巧みに使い、車を盗んで自宅まで戻った警官は、無線を使って少年にアプローチしていく。一方少年は、トランクの中の男を見つける、あの警官は悪徳警官だからと言われて男を解放。男は警官を呼び出し、殺そうと計画し待ち伏せる。

それに遡る時、一人の女が、少年が運転するパトカーを目撃する。

待ち伏せするパトカーに近づいてくる警官のトラック。不穏な空気に、トランクの男が待ち伏せしていると気がついた警官は、パトカーのうしろにかくれるが、そこへ、あの女がとおりかかる。その女を巧みに利用し待ち伏せしている男を発見する警官。女は撃たれ、反撃した警官と男は撃ち合ってお互い撃たれて倒れる
少年は中にあったピストルでガラスを破り、パトカーから出るが、その時一人が流れ弾を浴びて怪我をする。必死で運転するもう一人の少年。怪我をした少年はいまにも死にそうである。瀕死の警官がトラックでおいかけてくるが、途中で、牛とぶつかり死んでしまう。

暗闇を走るパトカー。町のネオンが見えてくる。警察無線が入る。エンディング。
なるほど、という感じの娯楽映画だ。それ以上でも以下でもない一本だった。


アイアムアヒーロー
原作コミックがあるとはいえ、ゾンビ映画の常道通りのストーリー展開で目新しいものはない。まぁ、ゾンビ映画として普通に楽しめる娯楽映画という出来栄えでした。監督は佐藤信介です。

平穏な毎日の描写から徐々に不穏な空気になり、原因不明のウィルス蔓延で、ゾンビと化した化け物が街をうろつき始め本編へ。

主人公英雄は、十数年前に手にした新人賞を心の支えに漫画を書いているが一向に売れない。趣味の猟銃も、使うことはない平凡な毎日。で、ゾンビに遭遇。途中拾った比呂美を連れて、富士山の高所を目指す。そこはウィルスが死んでしまうのだという。

途中のアウトレットパークでのゾンビとの戦いがクライマックスになり、そのアウトレットパークで集団生活していた人たちで、最後に残った藪と車で去ってエンディング。

クライマックス、次々と猟銃でゾンビを倒していく英雄の姿が、題名の由来だが、半ゾキュンの比呂美の活躍がもっとあっても面白かったと思う。

藪が長澤まさみだと最後まで気が付かなかった。導入部はちょっとくどいが、本編に入れば、スピーディに物語が展開、特に面倒なうんちくを無視してラストまで引っ張った構成は面白かったと思います。普通の娯楽ホラーですね。やはりロメロの「ゾンビ」のような哀愁とかを感じさせるものもないただのアクションホラーでした。