くらのすけの映画日記

「シネマラムール」の管理人くらのすけの映画鑑賞日記です。 なるべく、見た直後の印象を書き込んでいるのでネタバレがある場合があります。その点ご了解ください。

映画感想「渦」「ノック・ノック」

kurawan2016-06-14

「渦」
もっとゆるい映画かと思っていたら、意外にしっかりしたストーリー構成の脚本にどんどん見入ってしまいました。監督は番匠義彰です。

映画の配給会社を経営する中津洪介を主人に持つ伊沙子が、ピアノを弾いているシーンから映画が始まる。普通の夫婦なのだが、その普通に何気無いほころびから誤解が生まれ、その誤解の溝がどんどん膨らんで行くのがストーリーの中心になる。しかし、大人の感覚で描かれるドラマが実にしっかりしているのがこの作品の最大の特徴なのです。

伊沙子は山西という戦災孤児の世話もしていて、この山西がことあるごとに喧嘩をしたりして問題を起こす。その度に伊沙子が出て行き、その過程で、かつてピアノを習っていた鳥巣や山西の勤め先の副社長吉松らの人物が浮かび上がってくるあたりの展開が実に鮮やか。

一方で洪介は、思い入れのある映画の配給がうまくいかない中、いつもアルバイトでやってくるりつ子に思いを寄せられている。その気持ちもわかりながら、洪介は一線を越さない大人の良識がある。しかし、大阪出張の後、たまたま事務所で伊沙子からの電話をたまたまきていたりつ子がとり、思わず切ってしまったことから夫婦の間の溝が一気に膨らむ。

伊沙子はりつ子に嫉妬し、洪介を信じられなくなるし、一方、鳥巣はことあるごとに伊沙子と関係を持とうと接近してくる。そこにりつ子の見合いの話が絡む。さらにりつ子の叔父は吉松であったことからそれぞれの人物が全て絡んでくる終盤が実に鮮やかである。

洪介は会社に寝泊まりするようになり、伊沙子は鳥巣の求めに応じて大阪への旅行を決心する。しかし、山西はそんな伊沙子を止めるべく、鳥巣に近づき、喧嘩し、鑑別所へ。一方で吉松は自分の若き日のような山西の面倒をみることにし、山西に助けられたことになった伊沙子は実家に戻って考えてみるという。

りつ子は見合い相手との結婚を決意し、洪介の会社に行き、報告。こらからも時々来て欲しいという洪介に無言の返事をして出て行く。洪介は、妻を追いかけるべく、妻の実家岡山への切符を手配する。列車の中の伊沙子のシーンでエンディング。

全く、ここまで練りこまれた脚本を見せられると、さすがに一流の脚本家はすごいなと思うし、大人の演出ができる番匠義彰監督の手腕は大したものです。もちろん俳優陣も見事な大人の演技を見せるからすごい。掘り出し物の一本に出会った感じでした。


「ノック・ノック」
典型的な不条理劇という感じの一本でした。宣伝フィルムを見たときにちょっと面白そうかなという感じと、ラストどう工夫するのかと期待半分で見に行きましたが、宣伝フィルム以上のものではなかったのは残念。監督はイーライ・ロスです。

いかにも仲の良さそうなエヴァン夫婦の朝のベッドから映画が幕をあける。父の日ということで、息子と娘が飛び込んできて、手作り時計とケーキのプレゼント。この上もない幸せな一家である。妻と子供達はビーチへ遊びに行くことになり、夫のエヴァンは仕事のため自宅に残る。妻は芸術家で自宅には様々なオブジェがある。壁一面に貼られた微笑ましい家族の写真という美術もかなりあざとい。

一人深夜に仕事をするエヴァン、外は激しい雨、突然チャイムがなり出てみるとずぶ濡れの少女二人、しかもなかなかのキュートでセクシー。こうして物語が幕をあける。

最初は警戒していたエヴァンも、ここまでキュートだと気を許し、車を呼んでやり、バスローブを貸してやる。気持ちはややすけべおじさんになりかけてるが、そこは善人、必死で贖っている。彼女らと席を離れるように意識する演出がこれまたあざとい。カメラは室内の狭い廊下を縫うように移動したりを繰り返す。まさに迷路のような家である。

車が来て、服が渇いたのでバスルームで着替えさせているのだが、なかなか出てこないのでエヴァンが入ると、全裸の二人。抵抗するエヴァンもついに欲望に身を任せ一夜を二人と過ごす。ところが、翌朝起きてみると、女二人は好き放題に朝食を食べていた。

あとは、やりたい放題の二人に翻弄され、次第に命の危険を感じ始めるが、どうしようもない、さらにロープで拘束され、動画を撮られ、自分たちは未成年だと脅されて来れば、身動きできない。結局、エヴァンを訪ねてきた仕事の相棒のルイスも死に、エヴァンは庭に首だけ出して埋められ、彼女たちは去る。そこへ妻と子供達が戻ってきてエンディング。

ラストや途中のバトルにもう少し工夫があるかと思ったが、これというものもなく、ひたすら異常行動をする二人の女に翻弄されるエヴァンという展開だけが続く。女たちは次のターゲットを求めて去っていくという、いわゆるホラーの常道のエンディング。ちょっと後味が悪い映画ですし、これという面白みもなかったのですが、二人の女性がとにかくキュートで可愛いので許すとしましょう。