くらのすけの映画日記

「シネマラムール」の管理人くらのすけの映画鑑賞日記です。 なるべく、見た直後の印象を書き込んでいるのでネタバレがある場合があります。その点ご了解ください。

映画感想「ペレ 伝説の誕生」「ウォークラフト」

kurawan2016-07-08

「ペレ 伝説の誕生」
思っていた以上に良かった。映像がポンポンと飛び跳ねている。その軽やかなリズム感がオープニングからラストシーンまで途切れることなく続くので、とっても見ていて心地よい。確かに途中、主人公ペレが心の中で迷う場面もないわけではないが、そこも実に的確な時間と次の展開で、映像展開のテンポを崩さない。監督はジェフ・ジンバリストです。

スラム街で暮らす主人公ペレとそのともだちが、布を巻いたボールで次々とリフティングをして村中を走り回るシーンから映画が幕をあける。スピーディなカメラワークと切り返しを繰り返すこのオープニングから一気にサッカーの神様の物語に引き込まれる。

物語は実話であり、ヒーロー物語なので、ひたすらそのゴールに向かって突き進んでいく。時は1950年、ワールドカップでブラジルが負け、その独特のサッカースタイルにブラジル人たちも疑問を抱いてしまう。そして西洋スタイルのチームプレーを使う方向へ。しかしそれは逆にブラジルサッカーを衰退させていく。

ブラジルのサッカーの歴史は、16世紀、ポルトガル人が奴隷としてブラジルに連れてきた移民の物語に端を発する。奴隷たちは、こき使われることに反抗し、森に脱走、そこでポルトガル人に対抗するために、独特の格闘技を身につけ自衛する。しかし奴隷解放が実現し、村に戻った黒人たちに格闘技を使う術はなく、その技はサッカーに生かすことになる。こうして生まれたのがブラジルサッカーのスタイルジンガである。という解説が入る。正直、こういうことは全く知らなかった。

やがてペレは、サントスからスカウトされ、そこでみるみる頭角を現し、父の教えでもあるジンガスタイルで、チームを牽引していく。

幼い頃、地元の金持ちサッカーチームとの対戦シーンでのスラム街のチームの素朴さや、かつてプロだった父の温かい眼差しなど、心を打つ場面を随所に取り入れ、まさに英雄物語の王道のように展開するのだが、その常道が単純に胸に迫ってくるのだからいい。

そして、時は1958年のW杯スウェーデン大会。怪我が続く選手たちの苦戦の中、ついにペレに出番が訪れる。そして、幸運も重なっての決勝戦、誰もが抑えていたジンガスタイルのサッカーをチームメイト全員が披露し、見事ブラジルは優勝する。確かに、ヒーロー映画なので、神話的な演出や脚色もされていると思うが、終盤、とにかくサッカーを楽しめというチームメンバーのそして監督の言葉がラストシーンを一気に輝かせるのだ。

少々、映像テクニックに頼った部分がないとは言えないが、作品全体を覆い尽くす見事なリズム感がこの映画の面白さと感動を生み出したことは確かである。とにかく、サッカーの試合のシーンが実に華麗で美しく描かれている。見て良かったなぁと素直に感動する映画でした。


ウォークラフト
本来、この手の映画は敬遠するのですが、ダンカン・ジョーンズ監督作品というだけで見に行った。今時、こういうストーリーもこういう映像も目新しさはない。オリジナリティを見せるとすれば、演出に凝るかストーリーの面白さに凝るかだが、さすがにゲームをその原作にしてるので限界がある。とはいえ、まぁまぁ物語はわかったし、面白かったからよしとしよう。

すでに自分たちの世界が滅んだオーク族が人間の王国アゼロスに攻め入ってくるところから映画が始まる。それぞれには魔法を駆使する存在があり、勇者のようなヒーローが存在する。当然、この二者のバトル戦が中心になる。

空を飛ぶ鳥の化け物や、巨大な狼、さらに合いの子の女などが出てくる典型的なキャスト配置で、オークたちが築いた空間を超える門を通じてオークたちの残りが攻めいるのを阻止するのが中心の話になる。

どう考えても筋肉隆々のオークたちに人間が叶うはずがないように思えるが、そこは勇気と知力で立ち向かう。それぞれの魔法使いのような人物が強いようでどこか中途半端なのと、キャラクターのきわ立ちがどれもどんぐりの背比べなのが、ちょっと残念。

続編がありそうな終わり方をするけれど、ヒットしなければここでやめてもいいか程度のストーリーである。

ヒロインが今ひとつ美形でなかったし、ヒーローもそれほど際立つカリスマ性がない。ゲームの登場人物が原型なのだろうが、もうちょっと映像にするにあたりステロタイプ化を際立たせれば面白かったかもしれない。まぁ、普通の剣と魔法の映画でした。