くらのすけの映画日記

「シネマラムール」の管理人くらのすけの映画鑑賞日記です。 なるべく、見た直後の印象を書き込んでいるのでネタバレがある場合があります。その点ご了解ください。

映画感想「沈丁花」「君の名は。」

kurawan2016-08-31

沈丁花
四人姉妹を中心にしたたわいのないホームドラマ的な一本ですが、やはりこの時代の映画は華があっていいですね。監督は千葉泰樹です。

四人姉妹が母親と共に父の墓参りに行く場面から映画が始まる。三女と四女は結婚し、上二人が婚期を逃したような状態になっているのが母親には気にかかるというところからが本編。

見合い話やら、奇妙な出会いやらを繰り返すストーリー展開の中に、何気ない笑を織り交ぜた心温まるコメディで、京マチ子司葉子杉村春子等々、当時の第一線の女優が集い、対する男性陣にも、芸達者を揃えた豪華メンバーの映画で、たわいのない作品ながら、見ていて本当に心地よい大人のドラマです。

決して名作という出来栄えではないし、ラスト、すべての娘たちが嫁いで、一人になった母親のシーンでのエンディングは小津安二郎を思わせ、さらに、小津の凄さを見せつけられるという感じですが、安定した映画らしい映画という点では、今見ても見ごたえがあるなと感じてしまう一本でした。


君の名は。」(アニメ)
非常に評判がいいので、普段見ないこの手のアニメを見に行くことにした。確かに、作画はしっかりしているし、絵も美しい。しかし話が非常にくどいので、見せるべき根幹の話が完全にぼやけてしまった感じで、感動の持続が続かないという感じでした。監督は新海誠です。

1000年ぶりの大彗星が地球に接近するというニュースが聞こえるある日、山深い田舎の町に住む巫女の娘三葉は、夢の中で東京の男子高校生になる夢を見る。あまりにリアルな夢に戸惑うのだが、一方で東京に住む高校生の瀧は夢で田舎の女子高生になる夢を見ていた。

物語の前半はこの二人の入れ替わりが交互に描かれ、戸惑いながらもお互いの青春を謳歌し始めるのだが、実は、三葉の住んでいた村は彗星が落下して一瞬でなくなったことを瀧が知ることになり、物語は一気にファンタジー色を帯びてくる。

しかも、その出来事は三年前で、お互いに時間がずれていることに気がつく。ここから三葉と瀧のすれ違いのようなドラマと、お互い会わなくてはという展開、さらに、三葉の村人を避難させるという計画まで持ち出してくるから、お話がどんどん飛躍し枝分かれしていく。

とはいえ、うまくいったかどうか不明のままに彗星は落下、時は五年が経つ。三葉も瀧もかつてお互いが入れ替わった時の出来事の相手の名前を忘れている。就活に勤しむ瀧は、ある日電車のすれ違いで一人の女性を見つける。実は、8年前の彗星事件では奇跡的に村人が避難していて助かったという。

思わずお互いに惹かれあい、瀧はその女性に声をかける。その女性は三葉であった。名前を忘れながらも、誰かを探していた二人がようやく再会するラストシーンだが、ここの展開も実にくどい。どうなるのかという種明かしはしないまでも、90分の映画を2時間にした感じのくどさがあるのが本当に残念。終盤を畳み掛けていけば思い切り泣かせてくれたものをと思うのです。作りようによっては見事な傑作になりそうなのですが今一歩、技に溺れたか、ストーリーテリングに才能がないのか、という感じの映画でした。