くらのすけの映画日記

「シネマラムール」の管理人くらのすけの映画鑑賞日記です。 なるべく、見た直後の印象を書き込んでいるのでネタバレがある場合があります。その点ご了解ください。

映画感想「黄金のアデーレ 名画の帰還」「山猫リュシュカ」「男にな

kurawan2015-12-01

「黄金のアデーレ 名画の帰還」
これはいい映画でした。史実を基にした作品ですが、過去と裁判抗争している現在を巧みに繰り返しながらの映像のテンポ、さらに、サスペンスフルな展開を所々に織り込んだストーリー構成のおもしろさ、しっかりした構図と、カメラワークも美しい。なかなかの秀作でした。監督は、サイモン・カーティスです。

映画は、第二次大戦前、クリムトがこの映画の主人公マリアの叔母アデーレを描いているいるシーンから始まる。金箔を剥がす手のアップからセリフが入り物語は、1995年のアメリカへ。

主人公マリアの甥のランドルは、新前の弁護士で、大手の法律事務所に就職したばかりで、やる気満々の場面へ。たまたま、マリアの叔母の絵がナチスによって奪われウィーンの美術館にあることを知り、マリアと一緒にオーストリアに渡り、返還を求めるが、当然拒否。そこで訴訟を起こすことに決めるも、オーストリアで起こすと莫大なカネがかかるので、諦めて帰国。マリアも納得するが、最初は金目当てだったランドルは、本来の正義を貫くべきだと思い、アメリカで訴訟できないか判例を探す。

事実とはいえ、この作品の良さは、マリアが執拗に取り戻すことに固執しない部分と、ランドルが、正義を主張すべく立ち向かうという構図を見事にストーリーに生かしていることです。

9ヶ月後、ランドルは、アメリカで訴訟を起こす方法を見つけ、再びマリアを担ぎ出す。そして、オーストリア政府を相手に返還請求をする。しかし、調停まで持ち込んだにもかかわらず、執拗にウィーンに戻ることを拒むマリアは、反故にしてしまう。かつて、ナチスに迫害され、必死の思いで脱出したウィーンへ戻ることに抵抗したのである。

ストーリー展開で優れているのは、さりげなく登場する脇役が際立つことである。アメリカでの女判事、さらに最高裁での人間臭い判事、過去シーンで、マリアたちを逃す住民や、ウィーンでマリアたちを助けるジャーナリスト、サスペンスフルな脱出シーンも良い。それに、ストラディバリウスのチェロなど小道具も細かく映画を彩る。

単身ウィーンに乗り込んだランドルは、調停委員の場に、駆けつけたマリアを見つける。そして、調停委員はアデーレの姪のマリアにクリムトの作品すべて返還するという判決を下す。

ヘレン・ミレンのウィットの効いた存在感もストーリーを盛り上げるし、細かいところまで行き届いた美術も美しい。光の使い方も秀逸。

ラストはハッピーエンドになることは、史実ゆえわかっているものの、映画の面白さも兼ね備えた秀作でした。面白かったです。


「山猫リュシュカ」
昨日に続いて、エルンスト・ルビッチ特集の一本。例によってテンポよく展開するドタバタ劇の様相のラブストーリー。画面を円や縦枠、横枠、ギザギザなど様々な形で区切った画面で、変化を作り出し、リズムよく展開する物語に、逆回しなどのトリック撮影を多用した楽しい映像を作り出す。

とにかく、展開がリズミカルで、物語も、テンポが良いので、最後まで絶対に飽きがこないのがこの監督の最大の特徴だろうか。

物語は単純で、山賊の娘がリュシュカが、青年将校に恋をするが、さいごは、彼を恋焦がれる一人の女性に譲り、自分は予めの許嫁の基に戻るというほのぼのした純愛映画である。

何度もいうが、本当にポンポンと展開していく面白さを堪能できるえいがでした。


「男になったら」
この映画、ちょっとキュートでおしゃれなラブストーリーでした。

主人公は大富豪のおてんば娘。ある日、男装してダンスパーティーに出かけるのですが、そこで一人の男性と意気投合し、ラストは、ほんのり恋が成就。洒落た感満載の物語に、エルンスト・ルビッチ監督らしい、テンポの良いコミカルシーンが散りばめられ、リズミカルにストーリーが流れて、粋なラストシーンでエンディング。

45分ほどの中編ですが、ちょっとした映画でした。