くらのすけの映画日記

「シネマラムール」の管理人くらのすけの映画鑑賞日記です。 なるべく、見た直後の印象を書き込んでいるのでネタバレがある場合があります。その点ご了解ください。

映画感想「怪談お岩の亡霊」「炎の城」

kurawan2016-10-13

「怪談お岩の亡霊」
鶴屋南北の原作を忠実に再現したという作品で、地面に穴を掘ったと言われる底アングルから見上げるカメラアングルがものすごい恐怖感を生み出し、手持ちカメラの躍動感と日本映画らしい様式美、小唄を交えた音楽効果など、見応えと恐怖感最大の傑作怪談映画でした。加藤泰監督の代表作の一本ですが、私個人的には四谷怪談ものでは「東海道四谷怪談」より怖かった。

物語は、よく見る四谷怪談ものと若干違うのですが、これが本来のストーリー展開なのでしょう。出世のために岩と結婚している民谷伊右衛門が、家を出た岩を取り戻すべく、やくざ者の直助と良からぬ算段をしているシーンから幕を開ける。

一方で伊右衛門と知り合った商家の娘が、伊右衛門に想いを寄せ、娘の想いを叶えるために、その父親が金に糸目をつけず、岩の顔を崩す毒薬を伊右衛門の家に届ける。そして物語はよく知る展開に進んでいきますが、終盤まで真摯に時代劇としての様式美を守りつつ展開する様は見応え十分。

クライマックス、亡霊となったお岩が伊右衛門の前に現れる下りの恐怖感は半端ではなく、風、雨、セットの配置、雷が、大きくオーバーラップする岩の顔などなどのモンタージュがすごい。

一旦寺に身を潜めた伊右衛門だが、岩の妹の元恋人が現れ、共に伊右衛門を仇討ちに向かう。

とにかく殺陣の迫力の凄さ、カメラワークの大胆さ、構図の妙味が見事にマッチングし、時代劇という格調の高さを兼ね備えながら、ラストシーンに向かう。

なんとも言えない情念が画面全体から滲み出てくるような映像作りを堪能できる傑作である。見事でした。


「炎の城」
ハムレットを時代劇に置き換えた加藤泰監督の一本。独特の空気を持った作品ながら時代劇としては普通の作品に見えました。

主人公が明から帰ってくる場面から映画がはじます。帰ってみれば、父は殺され、叔父が城主となっている。しかも母もその奥方になっている。

叔父に殺されないように狂ったふりをする主人公ですが、この辺りがかなりあざとくて、おそらくハムレットの世界なのですが、どうも時代劇にそぐわないし、許嫁の父を誤って殺してしまって、正気になっていかざるを得ない展開がかなり荒い。

結局、再び城に戻った主人公、一方で、城主の圧政に苦しんだ農民たちが立ち上がる。迎え撃つ叔父たちと主人公、農民たちの大乱闘でラストシーンを迎えます。こういうシーンは伊藤大輔監督の方があ迫力があ流ように思います。

結局、大団円の末にエンディング。壮大なドラマとして完成はされていますが、やはりシェークスピアの世界は再現できていない気もします。