くらのすけの映画日記

「シネマラムール」の管理人くらのすけの映画鑑賞日記です。 なるべく、見た直後の印象を書き込んでいるのでネタバレがある場合があります。その点ご了解ください。

映画感想「家族の肖像」「ザ・ディープ・ハウス」

「家族の肖像」

ほぼ五年ぶりの再見。何度見ても根底にある知性が溢れ出すセリフの数々と、完璧すぎる映像に魅了されますが、まだまだ凡人のわたしにはこの映画の真価は計り知れないものかもしれません。素晴らしい傑作ですね。監督はルキノ・ヴィスコンティ

 

老教授の元に一枚の絵画が画商から持ち込まれ、購入を依頼して来るが、かつて裕福な貴族であったとは言え、さまざまな費用の出費に、今回は見送るという旨の話をしている。画商が去った後残っていたブルモンティ夫人が二階を間借りしたいと言い出し、傍若無人とも言える態度で部屋を見学する。間も無くして、コンラッドというブルモンティ夫人の愛人だという男性と、息子ステファーノ、娘リアッタの男女がやって来る。

 

突然二階の改装が始まり、破壊するほどの衝撃に老教授が慌てて二階に行くと、コンラッドが好き放題に壁を壊している。ブルモンティ夫人から、二階を購入したから好きにしていいと言われたという。こうして物語が始まる。

 

孤独ながら平穏な日々を送っていた老教授は来訪者によって、日常がかき乱され、混乱していくものの、彼らを家族として受け入れる事で、自分の残る人生を受け入れようと考えていく。老教授は、時折、かつて愛した妻の姿を思い出しながら、コンラッドらに接するようになっていく。

 

コンラッドは過激派の要員で、何かにつけ危険な匂いがしていた。そしてとうとう教授の部屋の二階で事故を装って殺されてしまう。息子のように可愛がった教授はすっかり体調を崩しベッドに横たわる。ブルモンティ夫人らが別れを言いに来る。誰もいないはずの二階に靴の音が響く。ベッドの脇にいつも置いている孤独な男のエピソードの本の一節が蘇ってきて映画は終わる。

 

画面の隅々、台詞の隅々まで生半可なものが一つもない傑作で、それ故にクライマックスあたりまで来ると見ている私の体力がもたなくなって来ている。それでもこの映画の凄さを堪能できる。これこそ映画史に残る一本だと思います。

 

ザ・ディープ・ハウス」

屋敷女」の監督作品という事で急遽見にいく。シンプルな話ですが、工夫で見せるホラー設定がとにかく怖い。水中なので亡霊がゆっくり歩いて来る恐怖、水の中という閉鎖空間、酸素ボンベの時間制限の設定など、見ているこちらが息苦しくなる中で恐怖が迫って来る。しかも、使い古された呪いの館というオーソドックスさも単純で面白い。アイデアの勝利というB級ホラー映画でした。。監督はジュリアン・モーリー&アレクサンドロ・バスティロ。

 

YouTuberのティナとベンのカップルが、この日も看護師が子供たちを惨殺したという病院へ潜入していた。いつものように撮影が終わって、次は湖の底の探検が計画されていて、ティナは浴槽で息を止める練習をしているが、今一つ目標に届かない。一ヶ月後、ベンとティナは目的の湖にやって来るが、賑やかに遊ぶ人たちしか見られずがっかりする。

 

ところがベンが知り合ったピエールという老人が湖の奥にある、湖底に沈んだ邸宅があるという。ベンたちはピエールに案内されるままに、森の奥地の湖にやって来る。水中ドローンを伴ってベンとティナは湖の底に潜ると、そこに見えて来たのは、蔦で覆われたような邸宅だった。

 

入り口を何とか見つけて中に潜入、どんどん奥に向かった二人は、行方不明になった子供たちの写真、さらに大量の8ミリフィルムなどを発見。ここの家族が子供を誘拐して拷問していたらしいとわかる。さらにキッチンの奥には鎖に繋がれた二体の死体を発見する。怪しいと判断し、とりあえず脱出しようとしたが入って来た穴はなぜか壁になっていた。出られなくなった二人は、窓や玄関などさまざまな場所から脱出しようとするが出られない。さっきまで鎖で繋がれていた遺体が突然消え、二人に亡霊のごとく迫って来る。

 

二人は逃げ道を探し回るが、ベンは寝室でこの家の家族の写真を発見、そこにはピエールが写っていた。ピエールはこの家の子供だった。ベンたちは何とか煙突から脱出しようとするが、突然上からレンガが降って来て二人は離れ離れに。ベンにはこの家の亡霊の一人サラが迫って来る。

 

何とか気がついたティナはベンを探しようやく出会うが、ベンは亡霊に洗脳されていた。酸素が少なくなる中、ベンはティナをシアタールームらしいところへ連れて行く。そこで、ここの家族が村の子供たちを誘拐して殺していたが村人たちに襲われ、ここの主人と妻は鎖に繋がれ、サラも惨殺された映像が映される。ピエールはその時に何とか逃げたのである。

 

亡霊たちが迫る中、ベンの意識を正常にしたティナは、蔦に覆われた穴からの脱出を試みるが、ベンは途中で亡霊に引き戻される。酸素ボンベの酸素はなくなり、何とか一人亡霊から逃れたティナは必死で水面を目指すが、あと一歩というところで息が続かず死んでしまう。エピローグとして、ピエールに案内されて二人の女性が湖にやって来た場面で映画は終わる。

 

非常にシンプルですが、アイデアを盛り込みホラーテイストの常道だけで突っ走る演出が実に面白く仕上がっています。所詮B級映画かもしれないけれど、こういう作品の映画づくりの基本が盛り込まれている気がします。