くらのすけの映画日記

「シネマラムール」の管理人くらのすけの映画鑑賞日記です。 なるべく、見た直後の印象を書き込んでいるのでネタバレがある場合があります。その点ご了解ください。

映画感想「草原の河」

kurawan2017-05-11

「草原の河」
これといって劇的な物語が展開するわけではないが、広大なチベットの景色を背景に、点のように存在する人物を配置した構図が繰り返される様が実に美しい。監督はソンタルジャという人である。

チベットで放牧をして暮らすヤンチェン・ラモが近所の少年にからかわれているシーンで映画が幕を開ける。放牧をして暮らすヤンチェン・ラモの家族、父はやたらバイクを乗って走り回るが、この地ではいわゆる交通手段であるから、バイクさえも自然の景色の中に溶け込んでしまう。

子供らしい美しく鮮やかな服装に身を包んだヤンチェン・ラモが常に画面の中でキラキラと光っていて、何も草木がないような平原と雪で覆われた河の景色に溶け込んだような映像が美しい。

母のお腹に赤ちゃんが宿り、ヤンチェン・ラモは母を取られたような気持ちになって何かにつけ反抗したりする。父は四年前に祖父と何かがあったらしく、そのことが許せない風である。

画面に点のように配置された構図で父のバイクに乗ったヤンチェン・ラモの姿が繰り返される。

ただ、それだけの展開だが、降り出す雪や溶け始める河の雪、羊たちの群れ、素朴な村の土塀、すべてが山水画のように見える瞬間があるからなんとも言えない景色である。

全体が映像詩のような空気が伝わってくる作品で、見ているだけでも空気が澄み切ってくる感じがします。ただ、派手な物語になれた身にとっては正直中盤でしんどくなったことも事実ですが、しっかりと配置されたクオリティの高い映像表現は評価されてしかるべき一本だと思います。良かったです。