くらのすけの映画日記

「シネマラムール」の管理人くらのすけの映画鑑賞日記です。 なるべく、見た直後の印象を書き込んでいるのでネタバレがある場合があります。その点ご了解ください。

映画感想「婚約者の友人」「バリー・シール アメリカをはめた男」

kurawan2017-10-23

婚約者の友人
モノトーンで静かに展開するミステリーですが、どこかいつもの不思議な空気感を感じることができませんでした。監督はフランソワ・オゾンです。

主人公アンナがフィアンセのフランツの墓参りに行くシーンから映画が始まる。ところが、墓には新しいバラの花が備えられている。調べてみるとフランスからやってきたフランツの友人アドリアンだとわかる。

最初は息子を殺したフランス人だと拒否していたフランツの父だが、次第にフランツを知る友人としてアドリアンを受け入れ、またアンナにも夫となってもらえたらという望みを抱き始める。

しかし、ある夜、フランスへ戻るアドリアンはアンナに、実はフランツを撃ち殺したのが自分だと告白し、去っていく。

アンナは、一時はショックを受けるものの、それも戦争の悲劇であると受け止め、両親には真実を話さず、フランツの良き友人として間に立って手紙のやり取りをする。

しかし、あるとき、差出人不明で手紙が帰ってきたことに不審に思ったアンナは、フランスへといく。そこでようやくアドリアンに再会するが、アドリアンは幼馴染との婚約をしていた。

かすかにアドリアンを愛し始めていたアンナは、フランツが愛した絵を見るためにルーブリ美術館に行く。そこにアドリアンもいて、「この絵が好きなのですか」という問いかけに「生きる勇気が湧いてくる」と答えるアンナ。

画面は今までのモノクロームから次第に色を帯びカラーになった絵のアップで終わる。このエンディングこそフランソワ・オゾンの世界だと思うが、ここまでの物語の展開にいつものミステリアスさが弱かった気がします。


「バリー・シールアメリカをはめた男」
それほど期待もしてなかったし、大した映画でもなかったのですが、なぜかラストシーンまで全然退屈せずに最後まで観れた。これって面白かったというべきなのか、不思議な映画でした。監督はダグ・リーマンです。

主人公バリー・シールが自分をビデオに撮っているシーンに映画が始まる。TWAのパイロットだった主人公バリーはある日、CIAからスカウトされ、第三国の写真を上空から撮る仕事を依頼される。

専用の飛行機を与えられ、見事な仕事ぶりをするバリーは、その仕事の途上で、麻薬王エスコバルと知り合い、さらに武器の輸送と麻薬の密輸を組み合わせた仕事を組み始める。

現金が面白いように手に入り、アーカンソーで飛行場まで与えられたバリーはさらに事業を拡大、置き場所に困るほどの現金が手に入るようになってくる。この辺りの展開がスピーディでコミカルなので退屈しません。

結局、最後は政府に利用された挙句、麻薬組織に殺されるのですが、その辺りを暗くリアルに描かないので映画が明るい。そして、自分がいずれ殺されると知った時点で、告白ビデオを撮ることにして冒頭のシーンになる。

実話であり、犯罪ドラマなので、生真面目に作れば暗部のみを描いて暗い作品になるところを痛快なピカレスク映画に仕上げたのがある意味娯楽としてよかったと思う。

もちろん麻薬を取り扱ったり、武器を取り扱ったりした犯罪者をこういう肯定的な描き方をしたのを素直に楽しむのはどうかとも思いますが、あくまで商業映画として楽しめば、これもありかと思うのです。