くらのすけの映画日記

「シネマラムール」の管理人くらのすけの映画鑑賞日記です。 なるべく、見た直後の印象を書き込んでいるのでネタバレがある場合があります。その点ご了解ください。

映画感想「横堀川」「ブルーム・オブ・イエスタデイ」「愛を綴る女」

kurawan2017-10-26

「横堀川」
山崎豊子原作のテレビドラマを映画として仕上げた作品で、吉本興業創業者吉本たかの半生を描いたものですが、さすがに倍賞千恵子では、線が細い感じがします。監督は大庭秀雄です。

昆布問屋のいとはんの多加が、やがて呉服屋へ嫁入りするが、若旦那は寄席好きであそびほうけるばかり。仕方なく、寄席の小屋を買い、立て直すことを計画、もともと商才のあるたかは、その才覚でどんどん繁盛していく。

今まで、何度も映画化されたものを見てきたので、出てくるエピソードは全て見覚えがあるが、三つの話を一つにした感じで、かなり駆け抜けていく感があるのは否めない。

ただ、脇役が素晴らしく、映画に味をどんどん引き出してくるのがこの作品の見どころと言えます。

物語はますますの繁盛で、さらに小屋を広げようとする多加の姿で終わる。古き大阪の街並みを描写した画面がなかなか楽しい一本で、その意味で見応え十分でした。


「ブルーム・オブ・イエスタデイ」
テンポもいいし、画面も美しい、映画としてなかなか良くできた作品だと思いますが、やや物語がくどい。監督はクリス・クラウス

主人公トトが、一人つぶやきながらのカットから映画が始まり、そのままタイトル、物語は五年前に戻る。ホロコーストの研究をするトトは、ナチの祖父を持ち、常にそのことで悩み、様々な研究書を書くことで、人生の出口を探している。信頼する教授が突然亡くなり、一方、ホロコーストの講演の企画がある中、一人の研究生ザジがやってくる。

彼女の担当をすることになったトトは、今ひとつ知識が中途半端なザジを罵倒しながらも、行動を共にする。しかし、実はザジの祖母はユダヤ人で、なんとトトの祖父と同じ学校だった。

物語はこの二人の行動を時にコミカルに、時にややシリアスに刺々しく描いていく。そして、いつの間にか二人は惹かれ合い、インポテンツだったトトもザジと体を合わせるが、ザジの恋人がトトの兄の収監されている刑務所などに連れて行ったために、二人の中に溝ができ、とうとう別れてしまい五年が経つ。

ニューヨークのクリスマスイブ、たまたまトトはザジに再会する。冒頭のシーンである。トトの娘も大きくなり、ザジにも息子がいる。挨拶をして別れた後、ザジの子供は女の子よとトトの娘に言われる。

かつて、トトとザジが一夜を共にした後、ザジが、きっと女の子が生まれると言った言葉がよぎって映画が終わる。

構図の美しさ、音楽テンポの良さがとっても魅力的な作品で、なかなかの感性で描かれた映画という感じでした。少々物語はくどいですが、こういうナチス映画もありなのだと思える一本。


愛を綴る女
最初は、要するに男好きの女のヒステリックな物語かと思われたが、ラストの数分で、圧倒的なラブストーリーであることが見えてきて、開いた口がふさがらない感動に包まれてしまいました。マリオン・コテイヤールの演技が抜群に素晴らしかった。監督はニコール・ガルシアという人です。

主人公ガブリエルと夫ジョゼ、そして息子が車に乗りピアノのコンクールに行くシーンから映画が始まる。リヨンの町のとある通りに差し掛かった時、ガブリエルは突然車を降りる。ジョゼは察したかのように妻を残し車を出す。そして物語は過去に遡る。

ラベンダー農園を営む両親のもとで暮らすガブリエルは、情熱的な恋に憧れ、「嵐が丘」の本を貸してくれた男性に猛烈なラブコールをするがあっさりといなされてしまう。しかし若き性欲を持て余すガブリエルは、ヒステリックに挑発的な行動を繰り返す。

そんな姿に両親は、使用人だが彼女に気があり真面目なジョゼを夫として迎えるようにガブリエルに提案、ガブリエルは愛のない結婚ながら渋々ジョセと結婚する。

自分に気の無い妻ガブリエルに、愛するあまり自由にさせて生活するジョゼだが、ある時、ガブリエルは流産してしまう。その原因が結石にあると分かり療養施設へ。

ガブリエルはそこで、腎臓に病気のある士官アンドレに一目惚れしてしまう。そして、ひたすら慕うガブリエルだが、ある時、アンドレは救急車で搬送されてしまう。

ところがしばらくしてアンドレは療養所に戻ってくる。ガブリエルはアンドレと写真を撮ったり、とうとう体を合わせたりするが、やがてガブリエルも治療が終わり退院。まもなく男の子を出産する。しかし、彼女はひたすらアンドレのもとに手紙を出すが、全く返事がこなかった。
そしてある時、自分が送った手紙が全く届いていなかったのを知る。

月日が経ち、冒頭のシーンへ続く。ガブリエルは、かつてアンドレが住んでいたであろう住まいにやってくると、彼に仕えていた下士官が出迎え、アンドレは、救急車で搬送された日になくなったことを告げる。全てはガブリエルの妄想だったのである。

帰ったガブリエルにこれまで隠していたことを告げるジョゼ。ガブリエルがアンドレと撮ったと思っていた写真にはアンドレの姿はなかった。ジョゼはガブリエルとアンドレの仲を知りながら、妻を信じて待ったのである。ガブリエルが療養所で一夜を過ごしたと思ったのはジョゼだった。

そして、二人はジョゼの故郷の街が見える丘に立っていた。

献身的なジョゼの愛、そして、ようやく本当に愛することを知ったガブリエルの姿で映画が終わる。良かった。そういう一言がぴったりの作品だった。