くらのすけの映画日記

「シネマラムール」の管理人くらのすけの映画鑑賞日記です。 なるべく、見た直後の印象を書き込んでいるのでネタバレがある場合があります。その点ご了解ください。

映画感想「天国と地獄」「あゝ、荒野」後篇

kurawan2017-10-25

「天国と地獄」
何十年ぶりかで見直した。今回は4K デジタルマスター版。しかし何度見てもすごいと思う。二時間半見せるとはこういうことなのだ。どの三十分を取っても映画として成り立っている。しかも、さりげなく遊びを挿入した緻密な脚本にも驚かされる。カメラワークのすばらしさいにも驚かされる。やはり黒澤明監督の傑作ですね。

主人公権藤の顔のアップからカメラが引いて回転するとナショナルシューズの重役陣がソファに座っている。まず、このオープニングに圧倒される。まるで舞台セットのように、段差とソファのセット、大きな窓で構成された美術の素晴らしさ。権藤氏が成功者であることの象徴と、犯人に犯行を行わせるきっかけになる見下ろす立ち位置、そして物語は丁々発止の役員同士の腹の探り合いから始まる。

この後、子供が誘拐され、しかも運転手の子供であることが判明、会社を手中にするために作った金を身代金として出すかどうかという苦悩のシーンへ続く。そして決心の後、有名なこだまのシーンによるスピード感溢れる映像、そして犯人の登場から、男の特定、麻薬受け渡しのシーンから麻薬巣窟の場面へ。もう圧巻の連続が続くのです。

そしてエピローグ、犯人と権藤の刑務所での対面シーン。

ここまで作られれば、とてもリメイクなどやりようもないし、不可能に近い。これが映画史に残る傑作というものだろう。素晴らしい一本でした。


あゝ、荒野」後篇
この映画はいい。確かに、全篇に比べて、若干物語を走った感じがしないでもないですが、若者たちの一瞬の血の滾りを彷彿させるようなバイタリティあふれる作品になっていると思います。監督は岸善幸です。

プロデビューした新次と建二は日々練習を重ねているシーンに映画が始まる。やがて新次は宿敵の裕二との対戦が決まり、その試合のシーンが中盤に描かれる。

一方の建二は、やがて袂を分かち、新次と対決するべく別のジムに移る。クライマックスはこの二人の戦い、そして建二の死で幕を閉じるが、全体に物語の展開が荒い。確かにある程度前半で人物描写を行なっているとはいえ、いかにも走りすぎた感じがします。

前後編一本で見たらそれはそれでよかったかもしれませんが、別々になったために、比べざるを得なくなった感じです。全体には決して悪い作品ではないのですが、こういう分け方で作るとこうなるという典型になった感じです。