くらのすけの映画日記

「シネマラムール」の管理人くらのすけの映画鑑賞日記です。 なるべく、見た直後の印象を書き込んでいるのでネタバレがある場合があります。その点ご了解ください。

映画感想「女の一生」「はじまりのボーイミーツガール」

kurawan2018-01-10

女の一生
モーパッサンの名作を映像化した作品ですが、映画として特に秀でていないものの文芸大作としての格調は崩さずに仕上がっている良心的な一本でした。原作を読んでいませんが、一人の主人公の半生が描き切れていたと思います。監督はステファヌ・ブリュゼ。

主人公ジャンヌは17歳を迎え、親の勧めもあってジュリアンと結婚する。しかしまもなく女中のロザリが妊娠する。しかも父親はジュリアン。こうしてジャンヌの波乱の人生が始まる。

まもなく子供をもうけたジャンヌは息子ポールを溺愛、一方母も死に、度重なるジュリアンの浮気、そして一人ぼっちになっていく。

やがて成人したポールは事業を起こすといって家を出て、手紙が来るたびに金を無心して来る。父も亡くなり、全くの一人になったジャンヌに、かつて追い出したロザリーがお世話をするからと戻って来る。

金に疎いジャンヌは、ポールの無心に応えているうちに、家も農園もなくしていた。全て失って借金だけが残るジャンヌを引き取り世話をするロザリー。そこへさらにポールから金の無心が来る。妻が死に娘が生まれたというが、信じないロザリーはポールのところへ向かう。

間も無くして戻ってきたロザリーの手にはポールの子供、つまりジャンヌの孫が抱かれていた。「人生はそれほど悪いものではないわね」というセリフで暗転。良いラストです。

スタンダードの画面で、寄り気味のカメラを多用して描いていく。時にフラッシュバックで幸福だった日々を挿入したりして現在の苦境を際立たせる心理描写もなかなかのもので、映像としてのリズムも作られています。ラストシーンを見て、映画を振り返って、しっかりと作られていたなと実感する映画でした。


はじまりのボーイミーツガール
エピソードがてんこ盛りで、どれも尻切れとんぼで完結せず、しかも中心の物語もかなり適当ながら強引にラストシーンになるという、付け焼き刃的な作品だった。もうちょっと感動させてくれるかと思ったが期待外れましたね。監督はミシェル・ブジュナー

父が修理工を営むヴィクトールはクラスの女の子マリーに密かに恋心を抱いている。
そんなマリーはチェロを勉強して音楽学校へ行くのが夢であるが、実は遺伝性の目の病気で間も無く失明する運命にあった。彼女の父は音楽を諦めて入院するように強引に接するが、マリーは自分で工夫をして悪化していないかに見せていた。

ある時ヴィクトールはマリーから声をかけられ次第に親しくなって来るが、実はそれもマリーが目の不自由さをかくすためだった。しかし次第にお互いが引かれ始め、ヴィクトールもマリーのために尽力するようになる。

しかし、音楽学校の試験を前にしてマリーの目が悪くなってきているのが父親にわかり、試験が受けられなさそうなので、ヴィクトールらがマリーを助け出し、しかし結局当日両親に見つかり、それでも父親は最後に考え方を変えて、試験会場へマリーを連れて行き、無事試験を受けるが、そのステージでマリーの視力は消えていってエンディング。

なのだが、マリーの両親の話やヴィクトールの父の話、クラスメートの話など様々なエピソードが盛り込まれていて、そのどれも最後まで描ききらない。その気持ち悪さのままラストを迎えるから、もうどうしようもない気持ちで劇場を出てしまった。こういう映画もあるんだなぁという一本です。