くらのすけの映画日記

「シネマラムール」の管理人くらのすけの映画鑑賞日記です。 なるべく、見た直後の印象を書き込んでいるのでネタバレがある場合があります。その点ご了解ください。

映画感想「駅までの道をおしえて」「ガリーボーイ」

「駅までの道をおしえて」

時間潰しに見にきた。なんともダラダラした脚本とストーリーテリングのセンスのない演出で、とにかく退屈な映画でした。これは、映画を作るということがわかっていない作家の映像というほかないです。しかも主演の女の子の演技指導がなってないので、やたら間延びしてるし、その上、スローモーションやストップモーションを多用した絵作りも最悪。ため息ばかりが出てしまいました。

 

主人公サヤカの飼い犬のルーが、突然死んでしまったところから物語は始まります。サヤカがいつも散歩の途中で立ち寄った秘密の広場でぼんやりしていると一匹のルーとは似ても似つかない犬がやってくる。その犬を追っていくと一点のジャズ喫茶のたどり着き、そこの主人フセという老人と知り合う。

 

こうしてフセ老人とサヤカの交流を通じて、二人の過去の悲しい出来事を克服していく展開となる。やがて、フセ老人は死んでしまい、サヤカはなぜかわかったように佇んでエンディング。とにかくだらけているし、エピソードや小道具が全部効果を生んでいないし、そもそもラストに向かってお話が流れていない。無理やり電車にこれまでの死んだ人が乗っているというこじつけで終わるのはなんとも言えない。まあ、こういう映画もあるんだね。

 

ガリーボーイ」

期待してなかったし、ラップは全くの素人なので、戸惑いながら見に行ったのですが、これがかなり良かった。インド映画得意の集団ダンスをラップで見せたり、シンプルな物語の背後に、いまだに根強く残るインドの封建的な社会性と、それがほんのわずかに崩れていく現代の流れもしっかり描かれている。ラップのリズムに乗せて展開するテンポ良さもうまいし、監督はゾーヤ・アクタル。

 

スラム街で暮らすムラドは、両親の献身的な努力で大学に通わせてもらっているが、友達らと車を盗んだり好き勝手な毎日を送っている。恋人のサフィナは医学生で、古臭い封建的な社会から飛び出そうとしている。

 

そんなある日、大学でシェールというラッパーの音楽を聴いたムラドはその魅力に引き込まれる。そして、シェールと親しくなり、自分の歌詞を見てもらいながらラップを始める。昔ながらの身分社会が正しいと信じるムラドの父は事あるごとに息子を殴り、身の程をわきまえろと怒鳴る。また母親にも豪剣を振るう。しかし、若者の考え方は次第に変化してきていた。

 

シェールやムラドのラップに興味を持ち、インド人ながらアメリカの音楽大学をでたスカイはそんな二人をプロデュースし、ムラドはガリーボーイの名となり、ネットに配信、一気にムラドの人気が上がるが、一方でムラドはサフィナとの仲にわずかな溝ができ始める。

 

父の機嫌をとって叔父の会社に就職したムラドだが、ラップを止めることはなく、そんな時、トップラッパーのNSAの舞台が開催されることを知る。そして、その前座になれるコンテストが行われることを知ったシェールとムラドは、優勝とチャンスを求めてチャレンジする。

 

一方、溝ができて疎遠になったサフィナとムラドだが、お互いの気持ちは決して揺るぐことはなく、サフィナは、インド独特の見合いの席で、ムラドの友人を絡ませ、ムラドとの仲直りを画策する。一方、ラップコンテストでは、ムラドは決勝に進むことになる。

 

そして、ムラドは決勝の舞台へ。反対していた父を説得して、時代が変わりつつあるのを納得させ、ムラドに好意的だった母も決勝の客席にやってくる。仲直りしたサフィナも、封建的な両親の目を盗んで客席にやってくる。

 

熱唱するムラドのカットで一旦暗転。その後、彼が優勝したエピローグ映像から、賞金を持って実家に戻ってくるムラドのシーンが描かれていく。

 

スラム街の若者がラップで成功していくシンプルな話だが、背後にインド社会の様々な風習を絡ませて展開するドラマが実にうまい。そして、時代が変化しつつある様子もしっかり描かれた脚本も見事。モデルとなるラッパー入るとは言え、掘り出し物の秀作だったと思います。